2013 Fiscal Year Research-status Report
口蓋裂術後の瘢痕拘縮分子メカニズムの解明と新規創傷被覆材開発への展開
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25463139
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
岐部 俊郎 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 医員 (50635480)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岸田 昭世 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (50274064)
中村 典史 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (60217875)
田口 哲志 独立行政法人物質・材料研究機構, 生体機能材料ユニット, MANA研究者 (70354264)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 瘢痕拘縮 / 筋線維芽細胞 / 創傷治癒 / 被覆材 / αーSMA |
Research Abstract |
口蓋形成術を含む口腔顎顔面領域の手術では、上皮欠損部の治癒後に瘢痕拘縮によって顔貌の変形や顎発育障害、言語障害、嚥下障害などの様々な機能障害を引き起こすことがよく知られている。本研究の平成25年度の研究実施計画は瘢痕収縮のメカニズムを明らかにするために、既存の創被覆材を用いて創傷治癒の過程を解析した。 生後7週の雌のラットの背部に直径8mmの全層欠損部を作成し、マーキングをした。創被覆材として欠損部にNEOVEILとTERUDERMISで被覆し、コントロール群は欠損部を被覆せずに、ラットジャケットで固定した。術後4日目と7日目にラットを屠殺し、創部の面積ならびに上皮新生の距離、α-SMAの発現についてコントロール群、NEOVEIL群、TERUDERMIS群の3群で比較検討を行った。 術後4日目と7日目の上皮欠損部の面積はNEOVEIL群とTERUDERMIS群がコントロール群よりも大きかった。上皮新生距離では明らかな違いは3群間で認めなかった。創の肉芽組織におけるα-SMAの発現は全ての群で4日目にピークとなった。α-SMA発現はコントロール群で最も強く、TERUDERMIS群とNEOVEIL群の間では明らかな差は認めなかった. 平成25年度の研究結果では、TERUDERMIS群とNEOVEIL群と比較して、コントロール群では上皮欠損部の面積は小さく、α-SMAの強い発現が観察された。しかしながら、上皮新生距離に明らかな違いは認めなかった。このことは創の閉鎖速度の違いは上皮の新生速度ではなく、創の収縮によることを示唆している.α-SMAの発現は創の収縮に強く関わると考えられているが、本研究において、α-SMAの発現はTERUDERMIS群とNEOVEIL群ではコントロール群と比較して抑制されていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はおおむね順調に進行している。平成25年度はラットを用いた創被覆材を用いないコントロール群、既存の創被覆材を用いたテルダーミス群、ネオベール群の3群間において、術後4日目と7日目の、創部の面積ならびに上皮新生の距離、α-SMAの発現についてコントロール群、NEOVEIL群、TERUDERMIS群の3群で比較検討を行った。 術後4日目と7日目の上皮欠損部の面積はNEOVEIL群とTERUDERMIS群がコントロール群よりも大きかった。上皮新生距離では明らかな違いは3群間で認めなかった。創の肉芽組織におけるα-SMAの発現は全ての群で4日目にピークとなった。α-SMA発現はコントロール群で最も強く、TERUDERMIS群とNEOVEIL群の間では明らかな差は認めなかった。これらの結果は、我々が立案した仮説を裏付ける結果であるとともに、次年度への研究・実験の参考となるデータであった。 また、ヒト口腔上皮由来の不死化細胞樹立によるヒト細胞実験系の構築に関しては、ヒト正常口腔粘膜上皮細胞株MOE1細胞及びHFF2細胞(既存のヒト不死化線維芽細胞)の準備を整えた。これらを用いて、我々の仮説を実証できるような共培養実験系を確立させ、ヒト細胞による再現性のある解析システムの構築をすすめる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画としては、ラット背部の創傷治癒過程の組織を採取し、筋線維芽細胞のマーカーであるα-smooth muscle ac tin(α-SMA)や血管新生に関わる因子の免疫染色を行い、瘢痕形成に関わると考えられている筋線維芽細胞の分布や治癒過程の解析を行う。また、瘢痕形成に関わる線維芽細胞の増殖には上皮細胞などから分泌されるbFGFなど関与すると考えられており、我々は他の上皮-間葉相互作用に関係するシグナル分子の解析も動物実験だけでなく、培養細胞を用いた実験系にて行う予定である。 また、当初の計画にはなかったが、既存の創被覆材やbFGF製剤を組み合わせにおける創傷治癒の過程を解析することで、今後の新規被覆材開発の参考データを得ようとする試みを計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験に必要なラットジャケットの価格が高かったため、ラットジャケットを自作した。その分の予算の余剰が発生している。 今年度は、様々な免疫染色の抗体や、細胞実験に使用する試薬が必要なため、これらの購入予算に充てる予定である。
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