2014 Fiscal Year Research-status Report
透析患者の歯科受診・受療行動に影響を及ぼす環境因子の解明と介入
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25463246
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
吉岡 昌美 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (90243708)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井本 逸勢(橘逸勢) 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (30258610)
白山 靖彦 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (40434542)
日野出 大輔 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (70189801)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 透析患者 / 口腔管理 / 受診・受療行動 / 環境因子 / 医科歯科連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度に行った歯科口腔外科併設病院の外来透析患者103名に対する聞き取り調査に、歯科口腔外科を併設していない診療所に通う血液透析患者57名に対する聞き取り調査の結果を追加し、合計160名の血液透析患者の歯科受診・受療行動に関わる影響因子について分析を行った。分析の結果、医科受診時に歯科受診を勧められた経験があるのは全体の3.8%であった。かかりつけの歯科医院を持つ者は77.5%であったが、定期歯科受診している者は全体の30.0%に過ぎなかった。かかりつけの歯科医院の有無、定期歯科受診の有無に関して、通院先(歯科併設の有無)による有意差は認めなかった。定期受診していない理由としては”必要ない”と答えた者が39.3%、“面倒”と答えた者が33.0%と多く、“時間が取れない”(15.2%)、“精神的に負担(恐い/痛い/嫌)”(11.6%)がこれに続いた。さらに、有歯顎者141名のみに限って分析した結果、定期歯科受診している群はしていない群と比べて歯茎の腫れ出血を自覚する人の割合が少なかった。(カイ二乗検定p<0.01)また、ロジスティック回帰分析の結果、“透析しているからこそ口腔管理が大事と思う”、“かかりつけ歯科あり”は定期歯科受診に対して有意に関与していることが示された。(p<0.05) また、透析患者に対する調査と並行して実施した全国の透析医療機関を対象とした郵送調査の結果についても統計学的分析を行った。これにより規模の小さい透析医療機関の多くは歯科口腔外科を併設していないこと、日常的な歯科との連携は協力歯科医院があるかどうかに大きく影響されることなどが明らかとなった。調査結果については今年度末に国際誌に掲載されたが、次年度には日本透析医学会学術集会・総会にて発表し、透析医療機関の関係者に報告する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「全国の透析病院への郵送法によるアンケート調査」の結果については、BMC Nephrologyに掲載され、国際的にも情報を公開することができた。また、「歯科併設のない透析医療機関の医科歯科連携」についてはさらに詳細な分析を加え、口腔衛生学会雑誌に掲載予定となっている。アンケート調査に協力いただいた透析医療機関の関係者に対しては、次年度に開催される日本透析医学会学術集会・総会において発表予定であり、アンケートで得られた情報を幾分かは現場に還元できるものと考えている。 「透析患者に対するアンケート調査」については、アンケート調査に協力いただいた医療機関のスタッフに結果を報告しており、今後の介入策を検討しているところである。 以上のように予定より早い時期に研究成果をまとめて発表することができており、これらを総合的に考えて「当初の計画以上に進展している」と判断したものである。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までに行った調査結果から、透析患者が定期歯科受診しない理由の多くは歯科受診に対する関心の低さ、無理解によるものであり、また、医科受診時に歯科受診を勧められた患者も少なかったことから、透析患者への定期歯科受診を勧めるには患者に対する啓発とあわせて、透析医療機関のスタッフに対する啓発も必要であることが示唆された。次年度は最終年度であるため、調査結果を最大限生かして透析患者の口腔管理を推進するための方策を具現化させたいと考えている。具体的には、透析患者、透析病院スタッフ、歯科医療従事者に対する3方面からの介入モデルを検討しており、透析患者を対象にソフト面での介入、透析病院スタッフや歯科医療従事者側に対するソフト面での介入、透析病院と歯科診療所の連携に関するハード面での働きかけを考えている。
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Causes of Carryover |
当初の計画では本年度から患者啓発用の媒体や医療従事者向け資料の作成を見込んでいたが、本年度は調査結果の分析と成果の発表を優先したため、これが次年度へ持ち越しとなった。このため、結果的にこれにかかる経費を一部持ち越すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、患者啓発用の媒体や医療従事者用の資料(冊子や動画)の作成を予定している。これらの媒体作成には透析治療や透析患者に精通した医師、歯科医師の協力が不可欠であり、平成26年度より持ち越した研究経費はこれらの人員に対する謝金として見込んだものである。その他、データ処理・媒体作成のための資料収集を担当する人員のための謝金や、媒体作成用文具類、検討委員会開催に関しての通信費、会議費等を研究費として使用する予定である。
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Research Products
(4 results)