2013 Fiscal Year Research-status Report
超音波処理によるアミロイド線維形成を指標としたプリオンの新規迅速検出法
Project/Area Number |
25502004
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
村山 裕一 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究所・インフルエンザ・プリオン病研究センター, 上席研究員 (20192776)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 異常プリオン蛋白質 / 牛海綿状脳症 / アミロイド繊維 / 超音波処理 / チオフラビンT |
Research Abstract |
クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)や牛海綿状脳症(BSE)などのプリオン病の病原体は、高次構造が変化した異常プリオン蛋白質(PrPSc)である。本研究では、超音波処理により、PrPScを核として急速にアミロイド線維が形成される反応を利用し、短時間でかつ高感度にPrPScを検出できる簡便で安全な検出方法を開発する。 本年度は、脳乳剤を基質に用いた場合のアミロイド線維形成条件を検討するため、プリオン蛋白質遺伝子ノックアウトマウス、牛あるいはマウスプリオン蛋白質を過発現したトランスジェニックマウス由来の10%脳乳剤に蛍光物質、チオフラビンT(ThT, 5μM)を添加し、全自動蛋白質異常凝集インデューサー装置 (Hanabi)を用いて蛍光測定(Ex:445nm, Em:485nm)、超音波処理(15秒照射-1秒休止を5回)、培養(37℃、1時間)の工程を10回繰り返した。また、各脳乳剤を1% Triton Xおよび4 mM EDTAを含むPBSで1:7に希釈したサンプルも同様に解析した。 その結果、脳乳剤を基質に用いる場合、プリオン蛋白質以外の蛋白質濃度を希釈して下げる必要があることが判明した。緩衝液で希釈したプリオン蛋白質過発現マウスの脳乳剤は基質として有効であり、定型BSEおよびL型非定型BSE由来PrPSc(1/1000希釈)の場合、デキストラン硫酸ナトリウム(0.5-1%)を添加することによって、反応開始後2~3時間で急速なThT蛍光の上昇が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来のPMCA法やQUIC法では達成不可能な、極めて短時間(2~3時間)で判定できる本技術の可能性を確認し、今後の技術開発に関わる下記項目について進捗が認められたため。 1)プリオン蛋白質以外のアミロイド線維形成の影響:プリオンノックアウトマウス脳乳剤(PrP% BH)を基質に用いた場合、8ウェルすべてにおいてThT蛍光が緩やかに上昇した。これはプリオン蛋白質以外によるアミロイド繊維形成が生じたことを示唆している。このような非特異的反応の低減には、プリオン蛋白質過発現マウスの脳乳剤を希釈使用することが有効であった。 2)BSE感染牛由来PrPScの検出条件:定型およびL型非定型BSE PrPScの検出には、希釈したプリオン蛋白質過発現マウスの脳乳剤を基質に用いるとThT蛍光の上昇はほとんど認められなかった。一方、デキストラン硫酸ナトリウムを反応液に加えると、L型非定型BSE PrPScの場合、2時間後で4ウェル中3ウェルのThT蛍光が上昇した。定型BSE PrPScでは、3時間で4ウェル中全ウェルのThT蛍光が上昇した。したがって、デキストラン硫酸ナトリウムはアミロイド線維形成や伸長反応を促進する作用があると推測される。
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Strategy for Future Research Activity |
1)L型非定型BSE PrPScで見られたように、ウェル間で結果がばらつく場合があった。これはおそらく超音波の照射むらのためであると考えられる。ウェルを左右、上下に振りながら超音波処理するなど、プログラムを改良し処理の均一化を図る。 2)希釈脳乳剤にも少ないながら、プリオン蛋白質以外の蛋白質が存在する。この場合、アミロイド線維の伸長反応が阻害される可能性があり、高感度検出の際の障害となる可能性がある。脳乳剤基質に加えて、組換え型プリオン蛋白質を基質に用いた検出系を開発する。
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