2014 Fiscal Year Research-status Report
フランスの共同住宅管理体制と管理思想に関する研究ー持続可能な管理体制の再編ー
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25512004
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
関川 華 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 講師 (10646087)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 管理体制 / 社会住宅 / フランス / イギリス / 日本 / 管理主体 / 職業訓練 / 資格 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は以下の4つの課題によって研究目的を達成しようとしている。課題1は「日本の区分所有共同住宅の管理体制の現状把握」、課題2は「フランスの民間区分所有共同住宅の伝統的な管理体制と、それが導入され始めた社会住宅の管理体制の仕組みの把握」、課題3は「フランスの民間所有共同住宅の伝統的管理体制が社会住宅に導入された経緯の解明、フランスにおける住宅に対する考え方ならびにそれを管理する思想の把握」、課題4は「イギリスの共同住宅の管理体制の概要の把握」である。 平成26年度は1~2月を調査期間として、インターネットに公開された住宅の管理主体にあたる管理人の求人広告を収集して文献調査を行い、掲載された情報から管理主体に求められる事項を把握した。社会住宅の管理主体に求められる事項として、民間所有共同住宅とは異なる点は、社会住宅の管理人の資格取得、団地内主体間(居住者、住宅供給事業者)の関係調整業務があることが明らかになった。さらに、3月には社会住宅の管理人に求められる資格について把握するため、管理人向けの職業訓練校の教員に対する聞き取り調査と資料収集を行い、資格取得のプロセスや講義内容等を把握した。この研究実績は当初の計画における課題3に位置づけられるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実質的な目的と照らし合わせて、現時点での研究の達成度についてみると、以下のとおりである。 課題1は当初、平成25年度にアンケート調査によって達成されるはずであったが、ヒアリング調査へと変更して平成26年度に着手することができた。アンケート調査からヒアリング調査へと手法を変更した点は、多様化する区分所有共同住宅の管理体制の現状を把握するには、質的調査法を用いる方が適切であると考えたためである。 都心の区分所有共同住宅の管理の現状を把握するという、本研究の基礎的な部分となる。平成27年度は物理的な維持管理の状況だけではなく地域との関わりを含めて区分所有共同住宅の管理の現状の把握を継続的に行って行く予定である。課題2は当初平成25年度及び平成26年度に計画された調査によって達成されるはずであったが、調査は平成25年度中に終わり、分析と取りまとめを行うことで達成する見通しができた。課題3は当初の計画通り、平成26年のヒアリング調査をもって達成された。課題4は、既往研究者との議論や文献調査によって、課題1から3までの知見をもとに平成27年度に検討することを予定している。 本年度の調査は、短期間ではあったが、調査内容、調査対象ともに当初の予定よりも充実した成果が得られた。社会住宅の管理主体の職業教育は、特殊な公的な職業教育機関のみで展開されるものと想定していたが、非営利団体及び民間の職業訓練校の存在、官民職業教育訓練機関の連携、フランスの教育システムの改組にまで関係する事柄であることが現地調査から確認することができた。フランスにおける住宅管理が社会問題の解決のための手法として活用され、更には建物の持続可能性へと繋がる概念であることを認識できた。その知見を平成27年度は学術論文に出来るよう努力する。
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Strategy for Future Research Activity |
現在のところ、平成27年度には課題1の継続と課題4の達成が予定される。そのための調査計画を現時点での進捗状況に合わせて検討すると、平成27年度は課題1を達成するためのヒアリング調査を行うとともに、イギリスにおける文献収集を出来るだけ早い時期(秋季を目処)に行うことを予定している。また、課題3については、平成25年度に行った、社会住宅の管理体制の構成に関するヒアリング調査の対象公社が持つ職業訓練機関へは、相手方の都合により調査をすることができなかった経緯がある。平成26年度の調査結果は一定の成果を達成したと考えているが、平成25年の成果との整合性をより担保するためには、上記職業訓練機関のヒアリング調査をフォローするのが望ましいと考えている。 さらに、平成25年度および平成26年度に実施したヒアリング調査で得られた成果を学術論文として発表することが最大の課題であると考えている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、平成25年度に行われた調査計画が調査人員を2名としていたにもかかわらず、代表者である関川1名が実際に調査に行くこととなったことであると認識している。また、調査対象者への謝礼や翻訳等の業務担当者への謝礼などを予算として計画していた。しかし、謝礼については、対象者への手みやげの建て替え払いを、公費とすることが研究代表者の所属機関では認められにくいという内情から、謝礼については私費にて対応しており、公費は使用していない。翻訳についても研究代表者が出来る範囲のことは自分で行っているため、予算として計画していた謝金の支払いにはいたらなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現時点での研究の達成度についてみると、ほぼ順調に研究計画が進展している。しかし、平成25年度に行った、社会住宅の管理体制の構成に関するヒアリング調査の対象公社が持つ職業訓練機関へは、相手方の都合により調査をすることができなかった。平成25年の成果との整合性をより担保するためには、上記職業訓練機関のヒアリング調査をフォローするのが望ましいと考えている。そのため、平成27年度に計画しているイギリスにおける文献収集と同時期に、フォローアップが望まれるフランスの当該公社へのヒアリング調査を計画したいと考える。
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Research Products
(3 results)