2014 Fiscal Year Research-status Report
膜タンパク質の迅速な質量分析に向けた赤外線レーザーによる大気圧イオン化技術の開発
Project/Area Number |
25513004
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
間 久直 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (70437375)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | レーザーイオン化質量分析 / 赤外線レーザー / 大気圧イオン化 / 液体クロマトグラフィー / 膜タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
①赤外線レーザーイオン源の開発 フリットと呼ばれる多孔質の金属製薄板を用い、液体クロマトグラフィー(liquid chromatography; LC)からの溶出液を連続的にイオン化させるために必要となる、LCとレーザーイオン化部とのインターフェイスを作製した。フリット表面から滲出するペプチド水溶液に波長6 μm帯の赤外線レーザーを照射することで試料溶媒の水がレーザー光を吸収し、ペプチド試料を連続的にイオン化させ、質量分析計で検出できることを示した。LCの溶媒として汎用されるアセトニトリルと水の混合溶媒を用いた場合でも、波長6 μm帯の水の吸収、および7 μm帯のアセトニトリルの吸収を用いてペプチド試料をイオン化させることができることがわかった。さらに、赤外線レーザーイオン源を用いてLCと質量分析(mass spectrometry; MS)をオンラインで接続したLC/MSで、アセトニトリルと水の混合溶液を溶媒としてペプチド(アンジオテンシンII)と薬物(レセルピン)の混合試料を分析した結果、LCによる分離とMSによる質量スペクトルの取得を同時に行うことに成功した。
②膜タンパク質のイオン化条件の検討 可溶化剤を含んだ膜タンパク質溶液に赤外線レーザーを照射することで、大気圧下での膜タンパク質のイオン化を効率的に行うためには、レーザー波長、レーザー強度、試料溶媒や可溶化剤の影響など様々な項目の検討を行う必要がある。平成26年度までに、イオン化用赤外線レーザーの波長を溶媒が吸収ピークを持つ波長3 μm帯、6 μm帯、7 μm帯で変化させ、各波長帯でのイオン化の効率を比較した。その結果、波長が長い吸収ピークの方が溶媒の吸収係数が小さいにもかかわらず、イオン化効率は波長が長い吸収ピークの方が高くなる傾向が見られ、イオン化機序に関する新たな知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①赤外線レーザーイオン源の開発 フリットを用いた赤外線レーザーイオン源の製作が完了し、水、またはアセトニトリルと水の混合溶液を溶媒としてペプチドをイオン化させ、質量分析計で検出することに成功した。さらに、赤外線レーザーイオン源を用いてLCとMSをオンラインで接続したLC/MSで、アセトニトリルと水の混合溶液を溶媒としてペプチドと薬物の混合試料を分析した結果、LCによる分離とMSによる質量スペクトルの取得を同時に行うことに成功しており、おおむね計画どおりに進んでいると言える。
②膜タンパク質のイオン化条件の検討 可溶化剤を含んだ膜タンパク質溶液に赤外線レーザーを照射することで、大気圧下での膜タンパク質のイオン化を効率的に行うためには、レーザー波長、レーザー強度、試料溶媒や可溶化剤の影響など様々な項目の検討を行う必要がある。平成26年度までに、イオン化用赤外線レーザーの波長を溶媒が吸収ピークを持つ波長3 μm帯、6 μm帯、7 μm帯で変化させ、各波長帯でのイオン化の効率を比較した。その結果、波長が長い吸収ピークの方が溶媒の吸収係数が小さいにもかかわらず、イオン化効率は波長が長い吸収ピークの方が高くなる傾向が見られ、イオン化機序に関する新たな知見を得ており、おおむね計画どおりに進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
①質量分析装置へのイオン導入部の開発 赤外線レーザーの照射によって生成したイオンを質量分析装置内の高真空へ導入する部分の形状や温度、フリットとイオン導入部との位置関係などについて検討を行い、イオン導入部の設計・製作を行う。特に、LCの溶媒として緩衝液を用いる場合に問題となる塩の析出による目詰まりや汚染を防ぐような構造を検討する必要がある。大気中でイオン化を行い、差動排気によって質量分析装置内の高真空へイオンを導入する予定であるが、大気中には大量の中性粒子が存在しているため、生成したイオンの大部分が中性粒子との衝突などによって失われてしまう可能性がある。このため、フリット、およびイオン導入部の周辺を減圧して低真空にすることも検討している。中性粒子の減少によってイオンの損失を大幅に減らせることに加え、LCからの溶出液の気化が促進されることによるイオン化効率の向上も期待できる。LCとMSをオンラインで接続し、実際に膜タンパク質の分析を行うことで、フリットの材質や構造、レーザー波長、レーザー強度、試料溶媒や可溶化剤の影響などについて検討する。
②オンラインLC/MSを用いた膜タンパク質の分析 LCとMSとをオンラインで接続し、膜タンパク質の分析を行う。LCの流量などを調整し、安定してイオンが得られる条件を明らかにする。精製された膜タンパク質試料の分析を安定して行えるようになってから、実際の分析に近い生体試料を用いた分析を行う。一般的なオンラインLC/MSのイオン化に汎用されているエレクトロスプレーイオン化(electrospray ionization; ESI)を用いた場合との比較を通じて赤外線レーザーを用いたオンラインLC/MSの有用性を評価する。
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Causes of Carryover |
平成26年度に設計・製作を予定していた質量分析装置へのイオン導入部について、設計変更の必要が生じ、平成27年度に製作することとしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度に設計した質量分析装置へのイオン導入部の製作費用として使用する予定である。
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Research Products
(8 results)