2014 Fiscal Year Research-status Report
気体引き込み流制御型スプレーイオン源を用いた細胞内リン酸化シグナルの定量計測
Project/Area Number |
25513006
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
川上 隆雄 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 客員准教授 (40366117)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | プロテオーム / リン酸化 / 分析科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
蛋白質の翻訳後修飾に関する定量的かつ包括的な知見は、細胞の制御機構を正確に理解する上で必須の情報である。本研究では、液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析 (LC-MS/MS) を用いたリン酸化シグナル伝達系の高精度定量法を開発する。本年度は、定量の参照として用いられる安定同位体標識ペプチドを複数種類用意し、より正確なペプチド定量の方法を検討した。 安定同位体標識を用いる定量法では、一般に1種類の標識ペプチドの一定量を試料に添加する。その際は、試料に含まれる定量対象の非標識ペプチドに比べて検出強度が同程度になるように添加量を調整し、検出のダイナミックレンジから外れることを避けるようにしている。今回は、上皮成長因子受容体 (EGFR) チロシンキナーゼのリン酸化部位を含むペプチドGSHQISLDNPDYQQDFFPKをモデルとして安定同位体標識ペプチドを合成した。すなわち、①18番目のPのみ標識したもの、②17Fと18Pを標識、および③16F、17F、18Pを標識、の3種類である。ペプチド間の質量差は10 Daとした。各ペプチドを1:10:1000の割合で混合し、10 fmol、100 fmol、および10 pmol分を測定したところ、添加量に応じた検出強度が得られた。 上記の標識ペプチド混合物を実試料に添加すると、1回の測定で検出強度の検量線と対象ペプチドの定量値を同時に得ることができる。また、対象ペプチドの量が試料間で大きく変動する場合でも、検量線の範囲内であれば各試料に同一量の標識ペプチド混合物を添加すればよい。このように、今回の工夫は定量操作の簡略化にもつながる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
やや遅れていると自己評価した。本研究計画での開発を目指した、イオン源への質素ガス引き込みは検出の再現性を得ることが困難だった。代替として用いた活性炭フィルターについては、検出ノイズの低減に一定の効果があることを確かめた。本年度の検討事項として挙げた標識ペプチド混合法は、全体の達成度の遅れを取り戻す成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
窒素ガス引き込み法に関しては、本年度までで不十分だったシグナルノイズ比の向上を引き続き課題に挙げる。気流が発生しないように窒素ガスの供給量の最適化を図るとともにガスの温度も検討する。これと並行して、試料の測定には活性炭の大気清浄フィルターを用いる。 前年度に引き続き、定量計測の対象となる合成ペプチドを設計する。すなわち、受容体チロシンキナーゼを中心に、定量対象のリン酸化部位を選定する。合計10種類程度のリン酸化部位を選定し、各リン酸化部位を含むアミノ酸配列情報から非リン酸化型の合成ペプチドを設計する。合成ペプチドの一部については、標識ペプチドの3種混合物として合成する。
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Causes of Carryover |
今年度の研究実施の結果、326897万円を次年度に繰り越すことにした。繰越額は学会発表のための外国旅費分に相当する。今年中の研究の進捗を検討した結果、海外での学会発表を来年度以降に延期したため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の繰越額は、次年度の合成ペプチドの購入に充てる。1種類10万円として、計3種類。より多数のペプチドを定量計測に用いることができる。
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Research Products
(1 results)