2013 Fiscal Year Research-status Report
大災害時における自治体と自衛隊の連携体制の確立に関する研究
Project/Area Number |
25516018
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
牛山 久仁彦 明治大学, 政治経済学部, 教授 (30308704)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 剛 明治大学, 政治経済学部, 教授 (10308059)
幸田 雅治 中央大学, 理工学部, 教授 (10635460)
田村 達久 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (60304242)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / 自治体危機管理 / 自衛隊 |
Research Abstract |
研究初年度の計画では、東日本大震災を受け、大災害発生時に、自治体と自衛隊が機能的・有機的に連携する上での課題を抽出し、被災地における自治体と自衛隊の連携体制の実態について、広く実証的なデータを得ることをめざした。また、次年度に実施を予定している自治体アンケート調査の準備作業として、自治体におけるパイロット調査を実施することが予定されていた。そこで、2013年度においては、以下の調査を実施した。①自衛隊関係者からのヒアリング、②被災自治体へのヒアリングである。①に関しては、東日本大震災時に、被災地に派遣されて活動をした陸上自衛隊、航空自衛隊の関係者から、自治体行政との連携の仕組みや、その課題について詳細なヒアリングを行った。また、②については、以下のようなヒアリングを実施した。ヒアリング対象とした自治体は、宮城県庁、宮城県亘理町、陸前高田市、大船渡市、遠野市である。いずれも被災自治体であるが、市役所が壊滅的な被害を受けた陸前高田市、被害は大きいものの、市役所は被災しなかった大船渡市と亘理町、被災地支援の後方支援基地として大きな役割を果たした遠野市、そして自衛隊との調整の役割をもつ宮城県庁といった特徴がある。とくに、被害状況が深刻であった陸前高田市では、行政職員に加えて、消防関係者、消防団にもヒアリングを行った。自衛隊の被災地活動においては、住民組織や消防団などとの連携がどのようなものであったのかも重要な論点であるからである。こうした調査実績に加え、研究メンバーによって行われた研究会では、自治体と自衛隊の法制度をめぐる現状や不備についての議論を行い、さらには、国際比較のための調査実施の在り方について、論点を整理した。なお、これら議論は、ヒアリング調査に先立って行われ、ヒアリング調査実施における調査項目として整理されたことを付記しておきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に予定されていた調査項目は、ほぼ予定通りに実施することができた。とくに自衛隊関係者からは、貴重な情報を多数得ることができ、文献・資料を通じて得た知見と共に、具体的な課題を探ることができた。また、自治体調査からは、被災地において、自衛隊との連携がどのようなものであったのか、さらにどのような課題をもっていたか等について、知見を得ることができた。こうした調査は、当初予定していた「サーベイ」調査アプローチの内容を、ほぼ充足させるものであり、二年度目に予定されている、自治体アンケート調査に十分に資するものとなっている。また、二年度目には国際比較調査が予定されているが、それらを実施する際の留意点や比較の視座も獲得することができたと考えている。 このように、当初の計画は概ね達成されていると考えるが、これらを、共同研究者の多様な視点(行政学、行政法学、危機管理学、国際関係等)から総合的に整理し、理論化するには至っていないのが現状である。二年目には、そうした点にも留意し、次のステップに移行していきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2年度目には、初年度のパイロット調査等をふまえた自治体調査、そして、初年度ヒアリング調査をふまえた、国際比較調査を実施する。これらに先だって、初年度の成果を活用し、効果的な調査を行うための議論を実施するため、数度にわたる研究会を行って論点を整理することとなる。初年度の研究では、自治体と自衛隊の連携については、阪神淡路大震災以降、かなり法制度整備がなされ、連携体制が強化されたと考えられる。しかし、その一方で、東日本大震災の被害が、広範かつ甚大なものだっただけに、その体制が十分なものであったとはいえない現状も垣間見ることができた。したがって、政府による首都直下、東海、東南海、南海トラフ地震、あるいは富士山の噴火等の深刻な被害想定を踏まえた上で、必要な連携体制の構築について理論的、実践的な研究を進めていくこととする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度では、当初の計画に加え、2013年10月に豪雨水害に襲われた大島町へのヒアリングを行うことを予定した。それは、東日本大震災において顕在化した、自治体と自衛隊との連携が、それ以降、どのように改善したのか、あるいは新しい課題はあるのか、といった点について明らかにしておきたいと考えたからである。被災地の状況や、他の現地調査の日程等を勘案しながら、2014年2から3月中の被災地調査を検討したが、被災自治体の状況等も勘案し、次年度以降に実施することとしたものであり、そのための費用を確保しておいたために残額が生まれ、次年度使用額となったものである。 以上の理由から、2015年度に大島町への調査を実施することを想定しているが、大分時間も経過し、東京での都庁へのヒアリング等で代えることができる可能性もあり、現地調査を行うことが不要となる可能性もある。その際には、海外における国際比較調査に充当するか、あるいは、近年被災した他自治体への調査に代えることも検討する。以上について、研究会での議論を経て、決定し、使用するものとする。
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