2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25550053
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
松山 政夫 富山大学, 水素同位体科学研究センター, 教授 (90135004)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 放射能汚染水 / 大量汚染水 / 減容化 / 氷結晶法 / リスク低減 / 福島第一原子力発電所 |
Research Abstract |
福島第一原子力発電所及びその周辺地域では放射性セシウム等の放射性同位元素による汚染が深刻な状態となっている。特に、放射性セシウム等を含む汚染水の保管量が、現在、数十万トン以上にも達しており、リスクの高い深刻な状況が続いている。従って、汚染水の漏水等による二次災害のリスク低減とともに環境の安全性を速やかに確保するためには、簡易な手法によって汚染水の全量を確実に減容し得る新規技術の展開が急務である。このような観点より、本研究では、汚染水中に冷却管を挿入し、汚染水を局所的に凍らせることにより許容レベル以下の純粋な氷を作り、これを除去することによって減容する方法、即ち大量汚染水の減容化を目途とした「氷結晶法」の適用性を検討し、その技術指針の構築を目指した。 水溶液から通常の氷を作ることは簡単であるが、水溶液中に溶けている不純物を可能な限り排除した氷を作るためには幾つかの条件が要求される。氷の成長面が鏡面状で成長する時、氷中への不純物の取り込みが最も少ないと考えられる。そこで、25年度は下記の条件について、非放射性セシウム水溶液による模擬水溶液及び放射性セシウム水溶液を用いて系統的に検討した。 (1)氷中の不純物濃度に対する冷却温度依存性:本試験では模擬汚染水(非放射性セシウムを含む水溶液10 kg程度)を用いて、冷却速度や冷却温度などの冷却方法を検討し、氷中の濃度が最低となる最適の冷却条件を探索した。また、得られた冷却条件を参考にし、次年度実施予定であった放射性セシウム水溶液を用いた試験も実施し、本法の適用性を検討した。なお、放射性セシウム水溶液を用いた試験は、放射性セシウムの使用が可能な施設を有している(株)化研の蓼沼氏の協力の下で実施した。 (2)氷中の不純物の濃度分布:冷却時間とともに氷は冷却管周囲に成長するが、その際にどのようなセシウムの濃度分布が生ずるのかを調べた
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究において汚染水の減容化試験のために設計・製作した試験容器は内容積が約14Lであり、これに10 kg程度の汚染水を入れて、種々の温度条件及び製氷化時間で試験を行った。製氷化は減容化試験容器内に二重管構造の冷却管を挿入し、これに所定温度の冷媒を流して冷却管周囲への氷の成長を試みた。その結果、室温条件にも依存するが、室温から段階的に冷却温度を下げ、最終的に- 4.5℃以下に冷却した冷媒を冷却管に流すことにより透明な氷の成長が観測された。 所定時間の製氷化後、未凍結液及び氷中のセシウム濃度を調べたところ、模擬汚染水を使用した1回の製氷化試験では、氷中のセシウム濃度は製氷化前の水溶液中濃度の約1/100~1/1000であり、未凍結液は氷の生成量に応じた濃度上昇が見られた。一方、放射性セシウムを含む水溶液を用いた製氷化試験においても、濃度差はあるが、氷中のセシウム濃度の大幅な低下が観測された。即ち、極めて微量の不純物を含む汚染水のような水溶液においても、その水溶液中で成長する氷は不純物を含まないようにして成長することが判明した。 更に、生成した氷を輪切りにし、成長方向のセシウム濃度分布を調べたところ、冷却管に接する部分で成長初期の氷は幾らか濃度が高くなっていたが、その他は極めて濃度の低い氷であり、濃度分布が殆どないことが知られた。 これらより、本法を利用することにより、セシウム等の放射性同位元素を含む大量の汚染水から水のみを抜き取ることが可能であり、極めて単純な操作により汚染水の減容化を図り得ることが判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
セシウム以外の不純物の影響:福島第一原子力発電所内に溜まっている汚染水には海水が含まれているため、セシウム濃度より遥かに高い濃度の塩分を初めとして種々の不純物が混入している。凍結時の氷への不純物の混入量は氷の成長面の形態が鏡面状であるか樹枝状であるかに大きく影響される。鏡面状では不純物の取り込みが少なく、樹枝状成長では不純物の取り込みが多い。鏡面状成長になるか樹枝状成長になるかは汚染水中の最大濃度の物質(NaCl)に影響される可能性がある。従って、汚染水の凍結に際して、氷中のセシウム濃度に対するこのような不純物の影響を調べる必要があるため、所定濃度のセシウム水溶液にNaClを添加して、NaCl濃度の影響を調べる。 また、実機の汚染水処理システムを設計するために、これまでの試験結果に基づき、現状の試験装置の100倍規模となる1回当たり1400L程度の中間処理システムの概念設計を行なう
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験補助に関わる人件費が当初の予定よりも安くなったため。 平成26年度では補助業務の時間数を増やして執行する計画である。
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Research Products
(4 results)