2013 Fiscal Year Research-status Report
調理によって生理機能性成分を新たに創ることはできるのか?
Project/Area Number |
25560036
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松村 康生 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (50181756)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮本 有香 武庫川女子大学短期大学部, その他部局等, 講師 (70399252)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 調理 / 機能性成分 / オキソ酸 / リポキシゲナーゼ / 野菜 |
Research Abstract |
トマトジュース中に存在するオキソ酸は、体の脂肪を燃焼させる成分であると報告されているが、この成分は、構造から推定すると、リノール酸にリポキシゲナーゼが働き、生成すると考えられる。他の野菜に関しても、リノール酸とリポキシゲナーゼが含まれているものが多い。以上の背景に基づき、本研究では、トマト及び他の野菜を対象として、調理操作(カットや刻み方、加熱の方法や温度条件等)の違いによって、効率的にオキソ酸を生成させることができるのか、明らかにすることを目的とする。同時に、そのような調理操作によって、美味しさに関わる品質がどのような影響を受けるのか、味、香りに関わる成分の定量や官能検査によって明らかにする。 平成25年度では、まずトマト単独の系を対象として、カット処理(丸ごと、1/2、1/4、1/8)やミキサー処理によって、呈味性成分(グルタミン酸、有機酸、糖)、香気性成分、オキソ酸量に変化があるのか検討を加えた。その結果、呈味性成分については、全ての処理区において顕著な変化は認められなかった。しかし、香気性成分(特にリポキシゲナーゼ反応産物であるcis-3-hexenalなど)やオキソ酸は、カット処理では、丸ごとの場合と大きな変化はなかったものの、ミキサー処理することによって大幅に増加した。ミキサー処理によって、初めて、リノール酸とリポキシゲナーゼが接触可能になったためと考えられる。 一方、トマトをタマネギ、ニンニク、オリーブオイルと合わせ、実際のトマトソースを調製する実験も行った。加熱操作をミキサー処理の前に行う、あるいは後に行う、また加熱の際に、いきなり高温にする、あるいは高温に達する前に40℃で保持するなど、いくつかの条件を組み合わせた。その結果、味や香りについて、官能検査や実際の成分分析において違いが見られた。またオキソ酸の生成量も異なっていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、平成25年度は、トマト単独、トマトと他の野菜を組合せたものを対象として、そのカットやミキサー処理、加熱操作によって、オキソ酸の生成量が変化するのか検討することを目的としていた。その目的はほぼ達せられた。 それに加えて、2年目以降に設定していた、調理物の官能評価や嗜好性に関わる成分分析についても、平成25年度から着手し、調理条件によって、これらが大きく変化することを見出した。オキソ酸の生理機能成分を増強しながら、嗜好性にも優れた加工調理法を見出すという最終目的に向かって、大きく前進できたものと考えている。 ただし、これらの結果は、年度後半において集中的に得られたものであり、学会発表や論文発表には至っていない。データ結果をとりまとめて早期の発表を計画している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度においては、トマトと他の野菜を混合した系において、調理条件を詳細に検討し、興味深い結果を得ている。同様な調理条件で、トマトや他の野菜を、それぞれ単独で処理し、オキソ酸の生成や呈味性に関わる糖分の生成が、どの野菜に由来するのか、あるいはいくつかの野菜の組合せで生じるのか、メカニズムの解明に努める。 平成26年度においては、解析法のいくつかを改良し、より定量性に優れたデータの取得を目指す。官能評価については、これまで比較的限られた人数で実施していたが、統計的な信頼性を高めるため、被験者を大きく増やして行いたい。また、官能評価の結果、甘さが増強したという結果が得られたサンプルについては、実際に還元糖の量も増加しているという結果が得られた。高速液体クロマトグラフィーにより、糖の種類や量が、調理条件によって、どのように変化しているのか、その結果が官能評価の結果と一致するのか、検討を進める。サンプルの外観については、目視によって色調が明らかに異なっているのが確認されているが、色差計を適切に使用することにより、色調の違いについても定量的な把握を試みる。 平成26年度は、本研究の最終年度に当たるため、これまでの実験の再現性の確認、データのブラッシュアップを上記の方法により試みるほか、他の野菜を組み合わせた調理物についてもデータの取得を行い、本アプローチが様々な素材を含む調理物に適用可能であることを示したい。
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