2013 Fiscal Year Research-status Report
ごはんは免疫を強くするか?-αグルカンによる生体防御システム活性化の分子基盤
Project/Area Number |
25560051
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
河本 正次 広島大学, 先端物質科学研究科, 准教授 (90294537)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | α-グルカン / 自然免疫賦活化 |
Research Abstract |
米飯の主たる栄養学的役割はエネルギーの供給にあるが、米食の健康増進作用に関する詳細な食生活学的知見は殆ど得られていない。申請者はこれまでに食用植物由来の多糖類が多彩な免疫調節作用ならびに疾患予防作用を示すことを明らかにしている。本研究では、米由来のα-グルカンがエネルギー源としての役割のみならず、生体防御能の調節を介して日本人の健康増進に一役買っているのではないかとの仮説を検証することを目的とした。 米由来のα-グルカン分子種としてデンプンを含有させた食餌を卵白アルブミン(OVA)の腹腔内免疫と同抗原の経鼻感作を基調とするアレルギー性鼻炎モデルマウスに自由摂食させ、その病態進展および免疫応答に及ぼす影響を調べた。その結果、うるち米由来のデンプン含有食の摂食群において鼻炎症状の進展が有意に抑制されていることが判明した。一方、本デンプン含有食群のIgE産生量は対照の通常食群のそれと有意な差異を認めないことが明らかとなった。また、うるち米デンプン含有食の摂食がin vivoにおける全身性制御性T細胞の動態に与える影響を確かめたところ、試験群の脾臓におけるCD4 (+) Foxp3 (+) 制御性T細胞数は対照群のそれと同程度であることがわかった。更に同様のアレルギー性鼻炎に対する予防効果は、うるち米由来のデンプンのみならず、アミロースを含まないもち米由来デンプン含有食の摂食によっても認められることを確認した。以上の結果から、米由来の食餌性α-グルカンが抗炎症作用を有することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
米由来α-グルカンの全く新たな抗炎症作用ならびに免疫疾患に対する予防効果を発見することができ、本研究は順調に進展しているものと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
米由来α-グルカンが免疫応答を調節しうる可能性を更に精査すべく、本食品成分の摂食が抗原提示細胞からのヘルパーT細胞(Th)分化を促すサイトカインおよび共刺激分子の産生・発現を誘導するかどうかを確認すると共に、Th1/Th2/Th17/制御性T細胞の分化誘導に影響を及ぼしうるか否かを確かめる。また、米由来α-グルカンの抗炎症作用点が肥満細胞のI型アレルギー反応の抑制にある可能性に鑑み、米α-グルカン含有食がin vivoのI型アレルギー反応モデルに及ぼす影響を検証する。更に、米α-グルカンの抗炎症作用に関わる構造-活性相関解析への手始めとして、種々のアミロース含量からなる米α-グルカン標品をアレルギー病態モデルマウスへの摂食試験に供し、抗アレルギー活性の発揮に対するアミロースおよびアミロペクチン構造の重要性を明らかにする。本検討により得られる米α-グルカンによる免疫調節に重要なリガンド単位を参考に、当該機能性グルカンを腸管免疫系に効率的に供給するための米飯や米食品の理想的形態、あるいは食べ方を提案する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の研究により、米由来α-グルカンには当初想定していた「免疫を正に調節する作用」とは逆の「過剰な免疫応答を負に調節してこれを鎮める抗炎症作用」があることが判明し、前者の仮説検証に係る当初の研究計画を実施する必要がなくなったため。また、当該研究成果を得るに伴い、国内出張用務(食による免疫の正の調節に関する最新情報収集)を取りやめたため。 本年度研究の進展により新たに実施の必要性が生じた、米α-グルカンによる肥満細胞-I型アレルギー反応経路の直接的抑制の可能性検証(消耗品費)に使用する予定であるほか、食による抗炎症作用ならびに免疫寛容誘導に関わる最新知見の収集(旅費)に使用する予定である。
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