2014 Fiscal Year Research-status Report
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25570005
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊谷 樹一 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (20232382)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | タンザニア / タケ / 酒 / 農村開発 / 商品化 / 環境保全 / 発酵 |
Outline of Annual Research Achievements |
タケの酒ウランジの成分を分析し、他の酒類にはないいくつかの特徴を見いだした。ウランジは、ワインの香気成分でもあるエチレンアセテートをワインの約2倍も含んでいた。また、果糖やブドウ糖という単糖類が甘みの主成分となっていて、これは他の酒類には見られない特徴である。単糖類は採取後の発酵によってアルコールへと変換され、採取直後に約4%であったアルコール濃度は72時間後には7.5%にまで上昇した。また、採集時にはすでに乳酸と酢酸が多く生成されており、その後も高い値で安定していた。pHは終始4弱の一定値を示していた。アルコール濃度ははじめ急速に高まり、2日目からは徐々に安定したことから、発酵は採集後72時間ほどで自然に停止すると考えられる。この発酵停止のメカニズムを解明することは、産地におけるウランジの商品化を進めるうえで重要である。 一方、ウランジを産出するタケOxytenathera abyssinicaを増殖するため、生育条件について生態観察、ならびに栽培試験を実施した。栽培試験は、2014年の雨季のはじめ(12月)に移植したタケ苗が、翌年の乾季の落葉を経験した後、再出芽するかどうかを環境条件の異なるサイトで比較した。その結果、このタケは地下水位の高い場所でしか乾季に生存できないことが分かった。それは、生態観察から得た、乾燥地域におけるウランジの分布とも一致していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究対象としている酒(ウランジ)の香気成分を明らかにしたことで、商品化する際の品質上の目標を定めることができた。また、ウランジは採取後72時間ほどで自然に発酵を停止し、その後しばらくは品質が安定していることを見出した。当初の研究計画では、商品化への最初の段階として、発酵停止技術の確立を想定しながらいくつかの技法を試行していたが、酵母の失活と香気成分の維持を両立することには成功しなかった。しかし、発酵の自然停止とその後の品質の安定が確認されたことで、研究の方向性を軌道修正した。つまり、商品化にとって必須の条件となる発酵の停止は、酒を静置することによる自然停止に委ね、発酵による香味の劣化(単糖類の減少など)を別の方法で補うことで、最もおいしいウランジを再現することにした。この方針転換により、研究プロセスは修正されることになるが、研究の目的にはむしろ着実に近づいたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請書に記したとおり、1)ウランジ生産工程、および生育・収量の最適条件の解明、2)ウランジ酒の発酵を止める加工技術の構築、3)竹林が周辺環境に及ぼす影響の解明、という本研究計画の基本的な枠組みに変更はない。ただ、2)の「発酵停止技術の構築」については、「発酵が自然に停止するメカニズムの解明」に変更するとともに、発酵停止の過程で生じる品質の劣化を補うために、糖類や香味を添加して風味を調整する試験を実施することにした。具体的には、ウランジではブドウ糖や果糖をおもな甘味成分として、あっさりとした独特の風味を出しているが、これは発酵が進むことによって失われてしまう。そこで、発酵の自然停止などによってエチレンアセテートなどの香気成分を保ちつつ、別に加熱処理によって早期に発酵を止めた糖液をつくり、これらをブレンドすることによって、ウランジ特有の風味を再現する試験を実施する。 3)の「竹林が周辺環境に及ぼす影響」については、今年の乾季と雨季に土壌サンプリングや浸食試験を実施して、土壌保全効果を定量的に示す。
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Causes of Carryover |
平成26年度には、タケの酒ウランジの発酵を停止するための技術開発を計画し、関連機器の開発費を予算に盛り込んでいた。しかし、年度途中で研究方針を「発酵停止技術の開発」から「発酵の自然停止メカニズムの解明」に軌道修正したことで、当該助成金の使途も変更することになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、竹林の環境への影響、ウランジ酒の発酵停止メカニズムの解明、ならびに香気成分調整試験を実施する。この助成金は、主として調査旅費と香気試験の消耗品費として活用する。
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Research Products
(4 results)