2014 Fiscal Year Research-status Report
観光地の文化的魅力を構成する次元に関する研究―イロケ、アジケ、ヒトケの視点から
Project/Area Number |
25570007
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
王 維 長崎大学, 多文化社会学部, 教授 (10322546)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤村 和宏 香川大学, 経済学部, 教授 (60229036)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 地域魅力形成要因 / 地域文化力 / 観光価値 / 歴史性 / 寛容性 / 異文化性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、観光地を文化を内包した地域ブランドとして捉え、観光人類学およびマーケティングの観点から理論的・実証的に考察することで、文化としての観光地の魅力を捉える新たな概念(「イロケ」「アジケ」「ヒトケ」)およびその測定尺度を提案するとともに、魅力の形成・維持において重要な役割を果たす要因(「コントロール力」「地域文化力」)の違いによる魅力の強固性の差異を理論的・実証的に明らかにすることを目的としている。そのため、前年度に続き、本年度は国内では萩、岩国、小樽、釧路、長崎、海外ではパナマ、メキシコのカンクンなどの観光地において、自然および人工的な施設などの物理的環境、祭りやイベント、名産品などの地域資源、および組織や参加者に関して研究調査を行った。調査を通して、現在の時点では明らかになったのは、文化としての地域の魅力を生み出す地域観光における差別化および競争優位性は(「コントロール力」「地域文化力」、以下の2つの要因が結合することによって生みだされる観光価値(経験価値)によって規定されることである。つまり①外来者を吸引する価値物:観光の十分条件としての、各種の地域資源の編集および創出を通じて形成される価値物である。②外来者に対する寛容性(受容性:観光の必要条件としての地域文化(インフラ)である。そして、どちらの形成に長時間を要するものであるほど(長い歴史を通じてしか醸成されないものであるほど)、差別化要因として働き、さらに模倣されにくいために、長期的な競争優位の源泉となる。例えば萩や長崎、カンクンの魅力は、外来者を吸引する価値物の形成においては、空間的時間的アジケ(伝統)イロケ(異文化性)を有する有形物や無形物を創造的に編集し、歴史で醸成された外来者に対する寛容性(イロケ)、そしてより魅力的なものにするための組織能力(=コア・コンピタンス)によって作り出されたと考えられる
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
観光地においての調査を通じて、研究目的で明示した地域魅力を構成する次元、つまり異文化の融合性を持つ地域のイメージを有する地域魅力の次元「イロケ」、土着の伝統文化が醸し出す魅力度の次元(アジケ)、異文化やそこからの外来者あるいは個々の住民の対応や態度から生み出される魅力度を評価する次元「ヒトケ」、に関する多くのデータを収集したことによって、研究課題の理論的枠組みの構築に有益な知見になると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究調査(特に質的調査)を踏まえて、さらに観光地における量的調査を行い、今年度の実績によって明らかになったことを実証的に研究し、理論の構築に進みたいと考えている。
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Causes of Carryover |
当初予定した中国南部地域での調査は調査地関連人員の都合によって,現地調査を実施しなかったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の計画には、追加調査を行う予定であるため、今年度実現できなかった中国での調査地も計画に入れる。そのため、次年度分として請求した助成金と合わせて使用することを見込むと思う。
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