2015 Fiscal Year Annual Research Report
東北被災地域における心霊体験の語りと宗教者による対応に関する宗教学的研究
Project/Area Number |
25580012
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 原 東北大学, 文学研究科, 准教授 (30451777)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 岩弓 東北大学, 文学研究科, 教授 (50154521)
木村 敏明 東北大学, 文学研究科, 教授 (80322923)
堀江 宗正 東京大学, 人文社会系研究科, 准教授 (90338575)
相澤 出 医療法人社団爽秋会岡部医院研究所, 調査研究部, 研究員 (40712229)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 心霊現象 / 幽霊 / 東日本大震災 / 宗教者 / 心のケア / 絆 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、東日本大震災の被災地において、「心霊体験」をしたと感じる人々に対しする宗教者の対応を調査してきた。期間全体を通じ、宗教者対象の聴き取り調査を中心に実施したが、2013年度には宮城県内の宗教者を対象として郵送による質問紙調査を行い、273件の回答を得た。この結果、宗教者が実際に「心霊体験」の悩み相談に応じていることが示された。その対応には、(1)受容と傾聴、(2)儀礼の実施、(3) 倫理的教育、(4)自己解決の了解、という特徴があり、実際に相談に応じている宗教者ほど、儀礼の有効性を感じている傾向がみられた。また、この種の相談が震災後半年以降に増加したという回答が散見されたが、それは一般に復興支援において「心のケア」が必要であるとされる時期と重なっている。 2014年度には、宮城県内の仮設住宅住民を対象として、故人との「心の絆」に焦点を当てた聴き取り調査を行った(100件)。宗教者に相談したいというニーズはあまり見られなかった(三割程度)が、「身内の霊」(親しい死者)と日常的に向き合っている人が多く、位牌、仏壇等の宗教的資源よりも思い出や写真が心の絆を支えるものとなっていることが示された。 2015年度には、東京近郊の仏教僧侶および信仰者を対象に被災地での霊的体験についての見解を聴き取りによって調査した。この結果、外から来た宗教者の方が霊的相談をしやすいという住民側の事情、霊への関心は薄いが、被災者により添おうとする宗教者の姿勢が明らかになった。また、霊的信仰を持つ信仰者には、震災と被災者の救済を霊的に意味付けて理解する傾向がみられた。 以上から、大量死に直面し悲嘆を抱える人々が様々な形で死者の霊の表象と向き合っていることが明らかとなり、その表現としての「心霊体験」を地域文化の中で受け止め、対処することが、宗教者による「心のケア」のあり方の一つであることが示された。
|
Research Products
(11 results)