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2013 Fiscal Year Research-status Report

ジャクソン・ポロックと連邦芸術計画

Research Project

Project/Area Number 25580165
Research Category

Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research

Research InstitutionChubu University

Principal Investigator

河内 信幸  中部大学, 国際関係学部, 教授 (40161278)

Project Period (FY) 2013-04-01 – 2016-03-31
Keywords雇用促進局 / 連邦芸術計画 / 大恐慌 / 原感情
Research Abstract

ジャクソン・ポロック(Jackson Pollock)は、1935年2月にブルックリン美術館のグループ展に『脱穀する人』を初めて出品したが、大恐慌の蔓延が社会危機を深めており、芸術に夢を託すほど生活のゆとりはなかった。そのためポロックは、連邦緊急救済局(FERA)の石切り工として公共のモニュメントや彫像を修復したり、清掃したりするなどの仕事を行った。
またポロックは、1935年8月に兄のサンフォードとともに、雇用促進局(WPA)の連邦芸術計画(FAP)に採用され、登録した壁画部門の仕事に従事した。さらに翌36年になると、ポロックはFAPの画架部門にも登録し、何度も中断するものの、FAPの仕事はWPA が終焉する1943年まで続いた。
ところが、絵画に対するポロック姿勢は、無意識レベルの強烈な「原感情」の表出を処理できず、意識の進める写実の作業に強く抵抗するようになった。しかも、そこには師であるロバート・ベントンとの離別の葛藤が絡んでおり、ポロックは、無意識から生まれる感性を芸術のモチーフにすべきだと強く思った。しかし、それは既成のコンセプトに対する大きな反逆であり、ポロックは孤独な闘いを強いられて苦悩を深めた。その結果、ポロックは次第に鬱状態から飲酒に溺れるようになり、アルコール依存症の治療を必要とするに至った。
1937年に入院したポロックは、ユング派の精神科医師ジョセフ・L・ヘンダーソン博士から精神分析の治療を受けた。ヘンダーソン医師は、ポロックに自由連想法によるデッサンの作成(オートマティズム)を求め、その精神分析からポロックが乳児期に味わった、母親に対する渇望や憎悪が明らかになった。ポロックは、当時流行していたフロイト派やユング派の精神分析学から大きな影響を受けており、深層心理に潜む、芸術に対する無意識の表出に注目していた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

連邦芸術計画(FAP)は後期ニューディール政策のなかで実施され、多くのポスター、壁画、絵画、彫刻が作成されたが、これはポロックにとって第一期目に当たり、当時のポロックは、芸術のモチーフを「形象」の世界に置いていたと思われる。しかし、1930年代の恐慌の深刻化と戦争への脅威がポロックの作風を大きく変化させていったのであり、FAPが後の作風に深く関係していることが分かった。
FAPに参加した芸術家はポロックのほかにも多数存在し、対照的な作風のベン・シャーンなどと比較することによって、ポロックとFAPの関係を分析し、アメリカ・モダニズムの背景が展望できるようになった。特に、ポロックにとって、第二期にあたるアクション・ペインティング、第三期のブラック・ペインティングへの変遷が重要であることが分かってきた。

Strategy for Future Research Activity

連邦芸術計画(FAP)の最盛期には5000人以上の芸術家が雇用されたといわれ、彼らは、未曾有の大恐慌下で社会意識を高め、公共施設やコミュニティとの関わりを深めた。そして、壁画などの公共空間における大画面へのチャレンジは、ポロックの“オール・オーヴァー”の作品などへとつながっていく。
しかし、ファシズムの脅威と戦争への不安がポロックを苛み、より内省的な精神世界へと分け入らせ、ポロックをアルコール依存へと追い込んでいった。しかも、1930年代末のニューヨークはヨーロッパのシュルレアリストたち牙城となっており、ポロックとFAP終了後の作風の関係を明らかにするとともに、ヨーロッパのシュルレアリスムの影響についても分析してみたい。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

平成25年度は、本研究課題の初年度にあたっていたため、連邦芸術計画(FAP)に参加したベン・シャンなど、ポロック以外の芸術家の関わりをかなり分析した。というのは、FAPに参加した芸術家はポロックのほかにも多数存在し、対照的な作風の芸術家もかなり研究しなければならないからである。
平成25年度は、ポロックが、「抽象」や「具象」という範疇に入らないイメージの原点を求めた芸術家であり、「形象」と「抽象」という二律背反の要素を動的に融合させる独特のアメリカ・モダニズムを目指したことが分かってきた。ただし、平成25年度に収集した、ポロックに関する資料や情報がデータベース化されているものが多かったため、平成25年度は海外調査・資料収集に出かける必要がなかった。しかも、それらの資料や情報が非常に多岐にわたっているため、まだ分析不足のところも多く、目指している英文論文や学会発表は平成26年度に先送りせざるを得なかったため。
ポロックの『無題』(Untitled)(1938~41年頃)、『誕生』(Birth)(1941年頃)などの作品は、パブロ・ピカソ(Pablo Picasso)、ジョルジュ・ブラック(Georges Braque)、アンリ・マティス(Henri Matisse)などのヨーロッパ作品と張り合い、アメリカ抽象表現主義が世界にうって出る契機となったともいえる。このようなアメリカ抽象表現主義の隆盛が後の「パブリック・アート」政策の開始へとつながっていくのである。
平成26年度は、連邦芸術計画(FAP)とポロックの関わりについて、論文の作成と学会発表を計画しており、アメリカの「パブリック・アート」政策も視野に入れつつ、平成25年度研究計画の予算と合わせて使用する予定である。

  • Research Products

    (3 results)

All 2014 2013

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results) Book (1 results)

  • [Journal Article] Ben Shahn's "Sorrowful Metaphor": The Suffering from the Diaspora and the Holocasut2014

    • Author(s)
      河内信幸(Nobuyuki Kawauchi)
    • Journal Title

      貿易風(Chubu International Review)

      Volume: 9 Pages: 7-26

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] Ben Shahn's Identity and Dilemma with War2013

    • Author(s)
      河内信幸(Nobuyuki Kawauchi)
    • Journal Title

      貿易風(Chubu International Review)

      Volume: 8 Pages: 7-19

    • Peer Reviewed
  • [Book] 北米の小さな博物館 第3巻 (共著)2014

    • Author(s)
      河内信幸 田中きく代 貴堂嘉之 柳澤幾美 梅垣昌子 小林純子 中野耕太郎 竹中興慈 北美幸 水谷裕佳 山本恵里子 内田綾子 安武留美 松盛美紀子 武田貴子 松山有美 河井紀子 神田かほる 廣瀬典生 山本明代 他12名
    • Total Pages
      327(80-89)
    • Publisher
      彩流社

URL: 

Published: 2015-05-28  

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