2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25590065
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
宮崎 毅 九州大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (40458485)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大谷 竜 独立行政法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (50356648)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 東海地震 / 地震被害想定 / 政策評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年は、「大規模地震対策特別措置法」及び「地震財特法」による東海地震対策によって建物被害が軽減されるのかに関する分析を行った。『住宅土地基本調査』による市町村別建築年別建物種別建物棟数データを主に利用して、建築年、建物種類、耐震化の有無別に建物再調達価額のデータ整備を行った。これらのデータに応用アール・エム・エス株式会社の地震被害計算システムを利用して、実際の被害額と東海地震対策を行っていなかった場合の被害額を計算し、その差から政策効果を分析した。単純に被害額を比較するだけではなく、市と町村、木造と非木造、建築年別、耐震化と非耐震化住宅、近隣県の被害軽減効果なども分析している。 分析の結果、分析対象の静岡県と山梨県のうち、静岡県で被害軽減効果が大きいこと、しかし一方で東海地震対策は民間建物の被害軽減には大きな影響を与えていなかったこと、軽減効果は分析対象の都道府県によって変動することなどが分かった。2番目の結果については、被害軽減が東海地震対策ではなく、建物の建て替えによって生じている可能性が示唆された。 関連する研究のレビューも行ったうえで論文にまとめ、分析結果は日本応用経済学会2014年度秋季大会にて発表した。 また、不確定性下での意志決定に用いられるベイズ推定の手法を用いて、地震予知情報の経済的価値の分析に応用した研究も進めた。上記の東海地域における被害額データを用いて地震保険の費用便益分析を行ったところ、結果が建物年や建物の構造に依存して大きく変動していることが分かった。これは、地震被害で支払われる保険額が損害率を引数とする階段関数状になっているため、損害率がある基準値のどちらかにあるかを敏感に反映しているためと考えられ、地震被害計算システムを用いて被害額を計算する際の入力値である、建物に関する諸パラメータについて再度精査する必要があることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東海地震対策の経済被害軽減効果については、Difference-in-differences分析も行い、実際に被害額を計算できた。関連する研究をレビューして分析結果を学会でも報告し、投稿段階にある。また、分析を進める中でいくつかの興味深い研究にも派生し、研究内容がより深まる可能性も見受けられる。一方で、地震予知による経済被害軽減効果と東海地震対策の総合的な評価については、まだ検討段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
東海地震対策の中でも地震財特法の施行は公共施設の被害軽減効果を高めた可能性が考えられることから、公共建築物のデータを収集整理して被害軽減効果を分析する。また、実際に震災が発生した後の被害軽減効果額が分かれば、地震予知による被害軽減額や空振りコストを計算することによって東海地震対策の総合的な評価ができることから、地震予知の経済的影響についても分析を進める。
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Causes of Carryover |
データベースの整備が遅れ、次年度に整備を行うため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の早期にデータベースの収集・整備を行う予定である。
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