2014 Fiscal Year Research-status Report
ケースマネジメントとコミュニティマネジメントの連結によるソーシャルワーク論の確立
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25590141
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Research Institution | J. F. Oberlin University |
Principal Investigator |
白澤 政和 桜美林大学, 自然科学系, 教授 (20094477)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ソーシャルワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度においては、前年度に実施した全国4カ所の地域包括支援センターに対するインタビュー調査の分析結果に基づいて、地域包括支援センターによる地域を基盤としたネットワーク構築のための実践状況について確認するための調査票を作成し、無作為に抽出した全国1,000カ所の地域包括支援センターを対象に自記式郵送調査を実施した。 調査の結果、調査票の回収率は35.5%(N=355)であった。そのうち直営の包括が88ヵ所、委託の包括が266ヵ所となっていた。また、設置年は平成18年が203件となっており、回答者が約60%が制度創設時から設置されている包括であった。本研究では、ネットワーキングの手法として、様々な地域活動を展開していくことにより、それらの活動の参加者間においてつながりが構築されるという仮説を構築しており、そのためにはPDCAサイクルでもって各地域に適した活動を実施・運営していくことが有用であると考えている。調査の結果、このネットワーキングとしてのPDCAサイクルによる地域活動の実施について、地域住民との信頼関係構築や、そこからの様々な情報収集に関しては比較的多くの包括が“実施している”と回答している傾向が明らかになった。しかし他方では、それらの地域に関する様々な情報収集に基づいて把握した地域の問題状況に対し、地域活動の計画を検討し、計画的にそれらの活動を実施・展開していくという取り組みについてはあまり実施していないという状況が示唆された。さらに、法的にその実施が根拠づけられた地域包括ケア会議についても、各包括において実施状況には大きな差異があり、十分に進んでいない市町村及び包括が多数あることも明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度より実施予定にしていた地域包括支援センターに対する自記式輸送調査も、十分な規模で実施することができ、また回収票数も今後のさらなる分析に十分な数を確保することができた。この郵送調査の調査票には、ネットワーキングのプロセスに則した様々な実践内容に関する項目を設定すると同時に、これまでの地域包括支援センターによる様々な活動を通した結果、地域にどのような変化が生じたのかという点について、ソーシャルキャピタル等の指標を参照にした項目を設定しており、両者の関連性について分析を行うことができるデータセットとなっている。ネットワーキングのプロセスに則した実践内容に関する質問項目については、これまでの研究結果に基づいて作成されており、一連の研究として連続性をもって取り組みが進められていると同時に、連携研究者らとも十分な協働を行いながら研究に取り組むことができている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、上記の郵送調査の結果について、詳細に統計的な分析を行うことにより、包括によるネットワーキングと地域の福祉力形成との関連性についての検証を進めていく。また統計的な分析に加えて、非常に多くの自由記述解答を集積することができたため、これらに対するテキストマイニングなどの分析にも取り組み、ネットワーキングに取り組むために有益であった職務経験や、またネットワーキングにおいて困難な事由などについても明らかにしていく予定にしており、2013年度に取り組んだインタビュー調査を起点として、そこで明らかになったネットワーキングのプロセスに関する実践状況、そしてそれらの実践がもたらす地域の福祉力形成についてまで、一貫した成果の創出を目指して研究を進めていく予定である。 加えて、従来より計画していたこれらのネットワーキングに関して、その実践を可視化させることにも寄与するアセスメントシート及びプランニングシートの開発に取り組み、またそれらを活用した研修教材等についても検討を行う予定にしており、根拠に基づいたソーシャルワークの理論を形成できるように研究を進めていくこととしている。
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Causes of Carryover |
包括を対象とした自記式郵送調査では、パンチング作業等を連携研究者らが分担して行うことにより経費を縮減し、全国1,000カ所の包括に対して実施することができた。しかし、実施時期が年度末であったため、調査票の回収が予定よりも遅くなり、それらの結果について整理するとともに、主要な分析結果をまとめた報告書がまだ作成できておらず、残額が生じる結果となった。早急に調査結果をまとめ、研修教材にも関係してくる報告書の作成を行う予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度実施 郵送調査 報告書印刷代:20万円、分析結果発表のための国内学会参加交通費:10万円、分析結果発表及び情報収集のための国際学会参加交通費:20万円、インタビュー調査経費(分析結果フィードバックと確認):10万円、連携研究者研究打合せ交通費及び会場代(×2回):20万円、全体報告書印刷代:20万円 前年度残額は、報告書作成分と地域活動推進の具体的な過程を明らかにすることに使う。
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