2013 Fiscal Year Research-status Report
眼球組織の移動と変形の計測による高精度視線推定の研究
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25590208
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
早見 武人 岡山大学, 自然科学研究科, 講師 (60364113)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村田 厚生 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (10200289)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 眼球運動 / 視線 / 視線入力 |
Research Abstract |
視線方向を高い空間解像度で計測する技術として現在最もよく用いられている方法は,眼球の画像解析である.画像解析による視線計測では,眼球の画像から得られる眼球の回転角の計測値と視線方向を対応させることにより視線方向を得ている(従来法).従来法による視線方向の計測精度は1°程度である. 本年度は視線方向の計測の典型的な応用であり計測精度の影響を受けやすいと考えられる視線入力における計測精度の影響を実験的研究によって調べ報告した.従来法の計測精度で得られた視線方向にカーソルを表示すると,カーソルは視線移動の意志とは無関係に振動しているように感じられる.この振動には生理学的な固視微動も関係しているものと考えられるが,それ以上に画像処理の精度によるところが大きいと考えられた.そこで画像処理のうち瞳孔位置検出について安定化を図った.実験により,画像処理の精度改善によってこの振動は抑えることができ,視角1°程度の領域に対して比較的容易に視線カーソルを移動できることができることが分かった.この結果から,視線方向の計測精度は瞳孔位置検出精度の改善により0.5°程度までは改善可能であると考えられた. しかし上記の方法では,視線方向を示すカーソルをストレスなく自由に制御できるようにはならなかった.もし視線方向の計測値と主観的な視線方向のずれの原因が眼球の回転に関する物理的な計測精度の限界によるものであり,眼球の回転とは無関係な主観的な視線方向の変動によるものでないならば,眼球運動の計測精度を上げることでこのずれはさらに縮小すると考えられる.そこで視線方向を移動させるときの眼球の動きをさらに高精度に捉えるため,高速度カメラによる眼球画像撮影システムを構築した.高速度カメラによる撮影は通常の撮影よりも高い光量が要求されるため,撮影システムはJIS C 7550に基づき安全性を確認しながら構成した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主観的な視線方向と視線計測によって得られる視線方向のずれが生じる原因には,物理的側面と心理的側面があると考えられる.本研究は物理的側面に重点を置き,眼球の回転による眼器の変形の効果を明らかにすることを目的としている.これは,視線の計測精度に影響を与える物理的な要因である力学的な効果と光学的な効果のうち,前者に着目したものである.したがって,その効果を明らかにするためには光学的な効果の影響をできる限り排除する必要がある. 視線入力は主観的な視線方向と計測された視線方向のずれを評価する目的に適したアプリケーションである.本年度は従来の視線計測法に基づいた視線入力実験において,瞳孔輪郭線の画像処理による検出アルゴリズムの改善により入力精度が向上したことから,このずれの一因が光学的効果である眼画像の画像処理過程における瞳孔輪郭線の検出精度にあることが明らかになり,その影響を低減できる見通しがついた. 次に,眼器の変形を画像処理により計測するための実験システムのうち光学系に関する部分の設計を行い,部品の調達を行った.高速度カメラによる撮影では露光時間が短いため一般に強い光源が必要とされる.しかし本研究においては眼球を撮影するため,強い光源は網膜を損傷する恐れがあることから安全な光量の範囲で撮影を行う必要がある.視線計測では光源として一般に赤外線LEDが用いられていることから当初は本研究においても赤外線LEDを使用する計画であったが,近年ではコヒーレント性が低く安全性の高い赤外線LED照明が開発されており,適当な赤外線LED照明を実験システムに組み込むことが可能であることが判明したため,当初計画を変更し,赤外線LED照明を光源とする視線計測システムを構築することにした.
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Strategy for Future Research Activity |
実験システムのうちこれまでに眼球撮影部分の光学系の準備が完了しているが,今後は眼球の回転や視線方向を計測するために視標による視線誘導の仕組みを組み込む.眼球の力学的な性質が視線方向によってなるべく変わらないようにするためには,実験協力者の眼球から視標までの距離は一定であることが望ましく,ディスプレイの使用が適切と考えられる.ただし実験協力者の前面に視標を表示するディスプレイを設置すると眼球を正面から直接撮影することはできなくなるため,ハーフミラーの使用を想定している.ハーフミラーの使用は計測精度低下を招く恐れもあるため,計測精度は慎重に吟味する必要がある. 実験システムの完成後は実験協力者の協力により視標追跡時の眼球画像を撮影する.視標の移動により滑動性ならびに衝動性眼球運動を誘発し,視標の移動量から算出される視線の回転半径と,眼球画像内の特徴的な点(瞳孔中心等)の移動量から算出される眼球の回転量または平行移動量を比較する.眼瞼と眼球の位置関係によるこれらの比較は,視線方向の回転と眼球の回転の関係を明らかにするうえで有効であるかもしれない.眼球を剛体と仮定したときに説明できない視線方向と眼球回転量の差異があればその一因は眼球の変形にある可能性がある.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
眼球の撮影に必要な照明器具のうち一部について,実験システムの他の構成要素である視線誘導表示や画像解析との組み合わせに配慮したほうが良いと考えたため,購入を先送りした. 実験システムに必要な照明器具,視線誘導に関する部分,ならびに画像解析部分を構築するために必要な物品を購入するために使用する予定である.
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Research Products
(1 results)