2013 Fiscal Year Research-status Report
シロールを高度に積層したお椀型分子の合成と革新的物性の探索
Project/Area Number |
25620023
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
斎藤 雅一 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (80291293)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ヘキサシラ[6]サーキュレン / トリシラトリンダン / モリブデン錯体 |
Research Abstract |
合成標的とするヘキサシラ[6]サーキュレンの精密な理論計算を行ったところ、その最安定構造は平面構造であることがわかった。またそのHOMO-LUMOギャップは2.58 eVと極めて小さく、当研究室で合成したトリシラスマネンのそれよりもはるかに小さいことが明らかになった。また[6]ラジアレンの隣り合う末端炭素をシリレンで架橋したトリシロールも、2.94 eVとかなり小さなHOMO-LUMOギャップをもつことがわかった。 ヘキサシラ[6]サーキュレンの前駆体となるトリシラトリンダンを、ヘキサキス(ブロモメチル)ベンゼン、マグネシウムとケイ素試薬との反応により一段階で合成することを試みたところ、反応は複雑となった。そこで、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(ジメチルシリル)ベンゼンを用いた反応を検討したところ、初めてのトリシラトリンダンの合成に成功した。 トリシラトリンダンの結晶化には至らなかったものの、これとモリブデンヘキサカルボニルとの反応を検討したところ、トリシラトリンダンの中心のベンゼン環にモリブデンが配位した錯体の単離に成功し、その構造をX線構造解析で明らかにした。ケイ素架橋部分はいずれもモリブデン側に折れ曲がっていることから、それぞれのベンジル位にある二つの水素は立体的にかなり異なった環境にあると考えられる。従って、そのリチオ化はかなり立体選択的に進行するものと予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヘキサシラ[6]サーキュレンの精密な理論計算を行ってその最安定構造を予測し直し、そのHOMO-LUMOギャップが既存の類似の分子系と比べて極めて小さいことを明らかにしたことは、本研究で提案した分子が物性化学的に有用な分子であることを証明する結果となった。また本研究の申請段階では提案していなかったが、本研究での手法を用いて比較的容易に合成できると予想される[6]ラジアレンの隣り合う末端炭素をシリレンで架橋したトリシロールもかなり小さなHOMO-LUMOギャップをもつことがわかったので、本研究提案の発展は十分に期待できる。 現時点ではヘキサシラ[6]サーキュレンの合成には至っていないが、その有効な前駆体であるトリシラトリンダンの合成には成功したので、今後のヘキサシラ[6]サーキュレン並びにトリシロールの合成は十分に達成可能であると考えられる。 以上のような研究の発展に関わるポジティヴな成果を上げられたので、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
トリシラトリンダンのモリブデン錯体の合成に成功したので、そのベンジル位にアニオンを発生させてケイ素官能基で架橋する反応を検討し、ヘキサシラ[6]サーキュレンの合成に向けた最終局面を検討する。また、トリシラトリンダンの酸化によるトリシロールの合成も検討する。 さらに、[6]ラジアレンの隣り合う末端炭素を硫黄で架橋したトリチオフェンをリチオ化してケイ素官能基で架橋し、チオフェン‐シロール混合系のヘキサヘテラ[6]サーキュレンを合成する。
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Research Products
(3 results)