2013 Fiscal Year Research-status Report
生体内レドックス解析に向けた革新的超偏極プローブ分子の創製
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25620135
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
野中 洋 九州大学, 稲盛フロンティア研究センター, 特任助教 (80579269)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 分子プローブ / 核磁気共鳴 / 核超偏極 / 酸化還元 |
Research Abstract |
本研究の目的は、生体における酸化還元(レドックス)制御を分子レベルで明らかにするために、生体深部における酸化還元状態をセンシング可能な革新的な核磁気共鳴プローブ分子を開発することである。生体内における酸化還元反応は、発生、分化、健康、疾病、老化などに重要な役割を果たしている。この生体における酸化還元状態を分子レベルで解析することができれば、未知の部分が多い生物個体での酸化還元が関与する疾患・生理機能の解明へと繋がることが期待できる。 革新的な核磁気共鳴プローブ分子の開発に向けて、核磁気共鳴の感度を劇的に向上可能な核超偏極技術を用いるプローブ分子を開発することにした。しかし、一般に核超偏極によって得られる高感度化した状態(超偏極状態)は、短時間であり生体解析へ適用することは困難である。そこで平成25年度は、まず高感度化した時間(超偏極寿命)を長くすることができる構造の探索を行なった。比較的高感度化の長い15N核に着目し、種々の安定同位体化合物を合成後 、高感度化時間と相関があるとされる縦緩和時間T1を計測した。T1データの蓄積や偏極緩和理論と照らし合わせることで、より高感度化時間が長くかつ導入可能な超偏極核の知見が得られた。平行して、酸化還元に関与する分子種と反応し、核磁気共鳴シグナルを変化させるプローブ分子の分子設計・合成・評価を行なった。いくつかのプローブ分子の合成終了後、プローブ分子と反応後の生成物とで化学シフト変化を比較したところ、十分な化学シフト変化が確認された。これより、プローブ分子の酸化還元反応を核磁気共鳴により解析できることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プローブ分子の開発は想定より早くすすんでいる。すでにいくつかの同位体標識したプローブ分子の合成も終わり、標的を検出する上で重要な化学シフト変化も起きることを確認している。特に、観測核の候補の1つである15N核の大きな化学シフト変化を誘起する分子構造変化を発見することもできた。これは15N核の核磁気共鳴イメージング等を指向する場合や、磁場の不均一性が影響する個体サンプルを測定する際に有効に寄与することが期待できる。 核偏極状態の評価が、やや遅れ気味となっている。その理由としては、世界的なヘリウム不足から冷媒として必要な液体ヘリウムを調達できなかったため、実際の超偏極状態での測定が限られていた点が上げられる。 全体としては、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、基礎段階でのプローブ分子の基本特性を収集・改善しながら、実際の生物サンプルを用いた実証実験を行なう。得られたレドックス情報と疾患との関連性を統合的に明らかにしていく。
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Research Products
(1 results)