2013 Fiscal Year Research-status Report
ナノ強誘電体における特異的磁性発現とその多機能性力学設計の創出
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25630010
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
嶋田 隆広 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20534259)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ナノ構造 / 強誘電体 / 特異的磁性発現 / マルチフィジックス特性 / 第一原理解析 |
Research Abstract |
強誘電(圧電)材料は、ナノ機械システム(NEMS)や高密度記録媒体など次世代科学技術の基幹を成す最重要材料である。通常、PbTiO3やBaTiO3などの強誘電体は磁性を示さないことがよく知られているが、研究代表者は、存在し得ないはずの「磁性」がナノスケールの強誘電材料中に現れることを見出した。本研究では、ナノ強誘電体の様々な幾何形状に依存して現れる特異な磁気特性とその発現機構を解明することを目的とする。さらに、負荷ひずみに対する発現磁気特性の連動作用(マルチフィジックス原理)を究明することを目指す。 初年度である平成25年度は、まず、(1)原子軌道の線形結合(LCAO)基底を基礎として波動関数を表現する擬ポテンシャルを強誘電体の構成元素(Pb,Ba,Ti,O)についてそれぞれ作成し、オーダーN法に基づく線形負荷分散による大規模第一原理計算を可能にした。これを並列計算機に実装し、本強誘電材料に対して計算環境の最適化や調整を行った。これを用いて、(2)薄膜、ワイヤ、ドットの外的形状を有するナノ強誘電体、ならびに、原子空孔や結晶粒界の内部組織構造に対して第一原理解析を実施した。その結果、一部のナノ構造体では磁気が発生することを明らかにした。(3)さらに、磁気が発生したナノ構造体について、電子密度・磁気密度分布の解析を行った。その結果、磁気は主として低配位数構造部に集中して発生することを明らかにした。(4)また、次年度実施する発現メカニズムの解明のため、発現磁気モーメント間の交換相互作用を評価するプログラムを開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究実施計画は、(1)大規模量子解析法の構築、(2)ナノ構造を有する強誘電体の大規模磁気量子解析、(3)発現磁気モーメント・秩序の3次元解析・評価、(4)発現磁気モーメントの特性やメカニズム解明のための交換相互作用評価法の構築、である。研究実績欄に記載のとおり、これらの予定項目(1)~(4)はすべて実施し、それぞれ目的の成果を達成している。したがって、研究は当初予定通り、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は順調に進展しており、今後の研究の推進方策も当初予定した以下のとおり実施する予定である。 (1)前年度開発した交換相互作用解析プログラムを計算装置に実装・調整する。量子解析で得られる波動関数データを同期することで、ナノ強誘電体における交換相互作用を解析するシステムを完成させる。 (2)構築した解析システムを用いて、ナノ強誘電体中の交換相互作用特性を評価・解析する。 (3)電子状態(主として、従来磁性を支配するd軌道成分)について評価・検討し、ナノ強誘電体中での磁気発現メカニズムを解明する。この際、通常の磁性材料の発現機構(例えば鉄)と比較を行うことで、本磁気発現メカニズムの新奇性についても同時に検討を行う。 (4)ナノ強誘電体に対して負荷条件下での大規模量子解析を実施し、負荷に対するナノ特有の変形特性を解明するとともに、それと連動する発現磁気特性の変化(マルチフィジックス特性)を評価し、電子状態変化からその原理を解明する。 (5)以上の研究成果をまとめ、磁気発現メカニズムとマルチフィジックス原理について総合的検討を行い、本研究の将来展望について検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、大規模量子解析のために大型の計算機を購入予定であった。しかし、構築した第一原理解析法が並列化効率が予想以上であったため、当初予定したものよりも少額の小規模計算装置でも問題なく研究を実施できると判断したため。これに対し、次年度実施予定のメカニズム解明には予想よりも多大な負荷がかかることが判明し、当初予定の装置では対応できないことが分かった。 平成26年度実施予定のメカニズム解明には当初予想よりも多大な負荷がかかることが判明し、この解析装置の増強に使用する予定である。
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