2013 Fiscal Year Research-status Report
生物ロコモーションの通底原理から拓くマルチテレストリアルロボットの設計論
Project/Area Number |
25630175
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石黒 章夫 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (90232280)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | マルチテレストリアルロボット / 自律分散制御 / ヒラムシ / ヘビ / 生物ロコモーション |
Research Abstract |
生物は,自身の身体が持つ膨大な自由度を巧みに協調させることにより,環境適応的かつ多様な振る舞いを生み出している.この発現機序の解明を目指して,これまでは歩行や這行といった特定のロコモーション様式を採り上げて議論がなされてきた.しかしながら,このような個別論的な考察が,さまざまなロコモーション様式に通底する発現機序の本質を捉えることを阻害していた可能性は否めない.そこで本研究では,「いかなるロコモーション様式であっても,周囲の環境から「足がかり(scaffold)」を効果的に獲得して,それらから反力を得て推進する」という,いわば原点回帰のシンプルな基本原理に基づいた議論を展開する.そして,このような基本原理に立脚する意義を,環境の力学的特性に呼応して這行や遊泳,飛行を発現可能な,広大な稼働環境領域を有するマルチテレストリアルロボットの具現化を通して示す.具体的には,ヒラムシと呼ばれる扁平動物をモデル生物として採り上げ,ヒラムシが這行運動時と遊泳運動時に環境からどのように反力を得て効果的に推進力を得ているかを行動観察実験などを通して調べた.次に,得られた行動観察実験結果に基づいて,環境変化に呼応して這行運動と遊泳運動を切り替え可能な自律分散制御則のモデル化を行った.その結果,ヘビの這行運動を表現しうる曲率微分制御を二次元に拡張し,さらに環境内の足がかりから効果的に推進力を得るための姿勢をつくり出す反射を組み合わせることが重要であることが理解できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は特に一次元ひも状という単純な身体構造を持つヘビに着目し,ヘビが示す周囲の環境から「足がかり」を効果的に獲得して推進力を得る振る舞いの考察を行った.その結果,単純な反射機能と自律分散制御則の組み合わせにより実現できることを確認した.いかなる生物ロコモーションであれ,周囲の環境内の「足がかり」から反力を得て推進している.本年度の考察は,このような生物ロコモーションの核となる原理を見出したと考えられ,研究の初年度にこのような考察ができたことの学術的意義大きいと判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,這行と遊泳の違いについての理論的・実験的考察を進める.これまでの研究から,這行運動における「足がかり」を活用したロコモーションや身体のくねらせ方に関する研究を進めてきたが,遊泳においての有効性は依然として明らかではない.そこで,ヤツメウナギを研究している生物学者や,流体力学を考慮したシミュレーション技法に詳しい専門家らと相談しながら,這行と遊泳の共通点を明らかにしていきたい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度は理論的研究が主体となり,これに伴って当初予定していた実験用ロボットのプロトタイプ製作を次年度に行うことにしたため.また次年度に国外会議への参加予定が入ったので,旅費を確保するため. ロボット実機に必要な小型高性能モータの購入や,国外会議への旅費に用いる予定である.
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Research Products
(2 results)