2013 Fiscal Year Research-status Report
超小型低圧風洞の開発と超低レイノルズ数領域の昆虫サイズ翼空力特性の研究
Project/Area Number |
25630395
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
岡本 正人 金沢工業大学, 工学部, 教授 (70462124)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 低圧風洞 / 超低レイノルズ数 / 翼の空力特性 / 昆虫の翅 |
Research Abstract |
本研究の目的は、真空デシケータ内に設置した超小型の風洞によって、これまで殆ど得られていない超低レイノルズ数領域(Re=1,000~10,000)における昆虫サイズ翼の空力特性を得ることにある。25年度は本実験で使用する低圧風洞の設計・製作を行った。4月より専門メーカに真空デシケータの設計・製作を依頼し、7月にデシケータが納入された。真空デシケータは予定通りの大きさを満足できたため、これに合わせて超小型の風洞を設計・製作した。まず、低圧下でも十分な風速を得るためのファンを選定しその性能を真空デシケータ内で確認した。整流用ハニカムおよびスクリーンはそれまでの風洞設計の経験から選定し、縮流部で十分な絞り比(面積比1:9)を与えることで気流の乱れ度を小さくし、流速を確保した。熱線流速計で調べた結果、測定部の乱れ度は通常の低速風洞並み(乱れ度0.3%以下)に抑えることができ、測定部の風速分布も適当であることが分かった。さらに、空気力計測用の三分力天秤はこれまでの測定においても研究者は自作が可能で、新たに高感度のものを設計製作した。これらの風洞装置は12月に完成し、デシケータ内の低圧下での測定が可能になった。試験的に測定を試みたところ、それまで精度を得ることが難しかった超小型の翼(トンボの翅1枚に相当する翼)の測定が可能であることが分かり、その後細部の改良に取り組んだ。しかしながら、所定の低圧(1/10気圧)での測定を開始する前にデシケータにクラックが見つかり、本年1月末にメーカに修理と改良を依頼した。修理が終わり再度測定可能になったのは4月中旬を過ぎてからで、その後所定の圧力まで下げることで本風洞の有効性が確認できた。しかしながら、再び別の場所にクラックが生じている。今後デシケータの修理が完了次第実験を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに測定が非常に困難であったレイノルズ数が3000以下の領域についても測定が可能であることが分かった。これは、当初予想した通りの結果であり、機器の製作についても予定通り進めることができた。一方生じた問題点として、1)真空デシケータのクラック 2) 風速測定用のピトー管が低圧下(1/3気圧以下)で十分機能しない 3) 低圧下で自作天秤のオフセットが大きくなる の3点が挙げられ、現在改良中である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の最大の課題は真空デシケータの破損であるが、製造メーカに対応していただいている。 真空デシケータが順調に使えるとした場合、当初予定していた課題であるチョウの鱗粉をはじめとする昆虫の翅の流体力学的作用を検証する予定である。 本風洞装置の有効性やこれを使用したことで見つかった現象は、適宜学会やシンポジウムで発表していくと共に、本課題の最終年度までに論文としてまとめたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
真空デシケータの破損により、年度末より実験の継続が不可能となり、実験が再開できるまで新たな機器の購入を控えた。 生物(昆虫の翅)の流体力学的観察を行うために、顕微鏡が不可欠であることが判明した。そのため、風洞との併用も考慮したマイクロスコープを検討している。これ以外に当初の予定である翼模型の製作費や学会発表費用に充てる。
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