2014 Fiscal Year Research-status Report
超小型低圧風洞の開発と超低レイノルズ数領域の昆虫サイズ翼空力特性の研究
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25630395
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
岡本 正人 金沢工業大学, 工学部, 教授 (70462124)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 超低レイノルズ数 / 風洞実験 / 翼の空力特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は研究課題である独自に開発した低圧風洞が完成し、実際の翼について測定を実施することができた。年度当初に問題となった真空デシケータに発生したクラックは、メーカーの改良により修理され、実験が継続して取り組めるようになった。そのため、翼模型を使用しての測定を行いながら、風洞装置の改良に取り組んだ。特に風速の特定に苦労したが最終的に解決することができた。低圧風洞を使用することにより精度の高い測定が可能となり、その結果、レイノルズ数が1000以下という今までに実施されたことのない超低レイノルズ数領域の翼の風洞実験が可能であることが確認できた。そこで、トンボの翅に見られるコルゲート翼等の昆虫の翅の特性について実験を行った。コルゲート翼については、精度の高い抗力測定が可能となったことから、層流境界層中の規則的な凹凸(コルゲート面)が抗力を減少させる可能性のあることが分かってきた。これは大変面白い実験結果であり工学的な応用も期待できるが、原因を完全に説明できないことからさらに研究を進める必要がある。さらに、最も興味ある現象として、コガネムシの鞘翅に見られる大きなキャンバーを持った薄翼が、空力特性において特異な性質を持つことが分かった。これはレイノルズ数が3000以下で特に有効な特性であり、本風洞を用いたことによって得られた新たな知見である。これらの成果は複数の学会で発表してきたが、特に後者については学術論文としてAIAA Journalへの投稿を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は機器の不具合からその改良に多くの時間を要したため研究が遅れていたが、実際に測定に入ってからは成果が得られるようになった。特に、レイノルズ数が3000以下という昆虫の翅に相当する翼の空力特性が正確に得られることは、今までに知られていない現象の発見にもつながる可能性がある。実際に、超低レイノルズ数領域の翼の空力特性について一つの新しい知見が得られ、これらは学会で発表するとともに学術論文として投稿を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
装置が完成し測定が可能になったが、僅かに問題点が残っている。その解決に現在取り組んでおり、すでにある程度目処が立っている。今後は装置の改良と平行してさらに詳細な超低レイノルズ数領域の翼特性について実験を継続する。また、今までに得られた成果は学会において発表すると共に論文投稿を予定している。
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Causes of Carryover |
開発してきた風洞装置が効果的なことが判明したため、これを用いた実験を行いながら装置の問題点の洗い出しを行った。そのため本年度は実験に必要な器材の購入に充てた。結果的に実験結果には一定の成果が得られたが、同時に風洞装置における問題点も僅かに判明した。その問題解決方法の検討に時間を要しており、次年度に繰り越すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
測定の精度を高める方法としてレーザー変位計を導入予定である。また、これを使用した翼形状の測定についても検討しているため、これらに必要な機材の購入に前年度分と合わせて充てる。風洞装置の改良と並行して翼特性の測定もさらに推し進める予定であり、得られた成果については学会発表や論文投稿を行う。実験に必要な経費と成果を社会に発信していくための経費として支出を予定している。
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Research Products
(6 results)