2013 Fiscal Year Research-status Report
光る透明ガエルの作出:非モデル両生類への遺伝子導入法の確立とNGSによる発現解析
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25640050
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
住田 正幸 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10163057)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
倉林 敦 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (00327701)
井川 武 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 特任助教 (00507197)
ISLAM Md.Mafizul 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 特任助教 (40598976)
中島 圭介 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (60260311)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 透明ガエル / 色彩突然変異 / 色素細胞 / 遺伝子導入 / 非モデル動物 / 光る透明ガエル / トランスクリプトーム解析 |
Research Abstract |
1.透明ガエルの遺伝様式と真皮色素細胞の組織学的観察:本研究では、ニホンアカガエルの灰色眼と黒色眼の2つの色彩突然変異を用いて、皮膚が透明で内臓が透けて見える透明ガエルを効率的に作製し、その遺伝様式を明らかにした。人工受精法により、透明ガエルの作製には灰色眼♀×野生型(ヘテロ)♂の交配が最も効率的であることが分かった。また、透明ガエルの皮膚の微細構造を調べるため、野生型、黒色眼、灰色眼および透明ガエルの真皮色素細胞を電子顕微鏡で観察した。その結果、野生型では黄色、虹色、黒色の3種類の色素細胞が層状に観察された。灰色眼には黄色素胞と虹色素胞が存在し、虹色素胞には異常な丸い反射小板が観察された。黒色眼には黄色素胞と黒色素胞が存在し、黄色素胞には未熟なプテリノソームやカロテノイド小胞が観察されたが、虹色素胞は観察されなかった。透明ガエルでは色素細胞の数が少なく、未熟な黄色素胞様の細胞が見られ、その中にはメラノソーム様の構造も観察された。2. 陸棲ガエルへの遺伝子導入法の確立:本研究では、ツメガエル類の遺伝子導入手法(Ogino et al.,2006)を陸上性のニホンアカガエルに適用するため、顕微注入法の条件検討を行った。検討の条件は、(1)卵ジェリーを取り除く溶液(チオグリコール酸ナトリウム)の濃度とpH、(2)インジェクション時の針の太さ、(3)インジェクション時のガス圧、(4)注入DNA、I-SceI(あるいは蛍光色素タンパク質mRNA:後述)の濃度と容量、(5)インジェクション時とその後の受精卵維持水の水質と至適温度、の5点である。インジェクション効率および遺伝子導入効率の測定には、赤色蛍光タンパク質mcherry mRNAとCMVプロモーター連結EGFP/I-SceIベクターを用いた。まだ、予備実験の段階であるが、受精卵に顕微注入した2日後のmcherry発現胞胚が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ニホンアカガエル皮膚mRNAの網羅的解析(トランスクリプトーム解析)を、計画通り行なうことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
1.組織・器官特異的に光る透明ガエルの作成-昨年度の実験で得られた顕微注入最適条件下で、I-SceIエンドヌクレアーゼを用いた組織特異的プロモーター/蛍光タンパク質の導入を実施し、トランスジェニック透明ガエルを作成する。なお、ニホンアカガエル受精卵から成体までの飼育方法は申請者らが確立している(Sumida 1996; J. Herpetol. 30:333-346など)。 2. ニホンアカガエル皮膚mRNAの網羅的解析:昨年度計画してできなかった実験であるが、今年度は、ニホンアカガエル野生型および透明ガエルの変態期前後の皮膚(皮膚に色がつきはじめる時期)からmRNAを抽出し、完全長cDNAを合成する。cDNAをロングリード型次世代シークエンサー(GS-FLX+あるいはGS-junior:ロシュ社)でショットガンシークエンスする。ここで得たcDNA配列をネッタイツメガエルや、メダカ、マウス、ヒトゲノム情報と比較し、ニホンアカガエル変態期皮膚で発現している遺伝子とその配列を明らかにする。野生型と透明ガエルで得られた各相同遺伝子の配列を比較し、透明ガエルで機能が欠けている可能性のある(フレームシフト・アミノ酸欠失・置換が生じている)遺伝子リストアップする。それらの中で、他の動物で色素細胞の分化や色素合成・運搬に関わっていると考えられる遺伝子を、透明ガエルの黒色・虹色素胞異常の原因遺伝子候補とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ニホンアカガエル皮膚mRNAの網羅的解析(トランスクリプトーム解析)を、計画通り行なうことができなかった。この予算(次世代シークエンサーによるシークエンスにかかる費用)を今年度に繰り越したため、次年度使用額が生じた。 今年度は、ニホンアカガエル野生型および透明ガエルの変態期前後の皮膚からmRNAを抽出し、完全長cDNAを合成し、cDNAをロングリード型次世代シークエンサー(GS-FLX+あるいはGS-junior:ロシュ社)でショットガンシークエンスする。上に記載した通り、この解析には、外注費として支出する予定である。ここで得たcDNA配列をネッタイツメガエルや、メダカ、マウス、ヒトゲノム情報と比較し、ニホンアカガエル変態期皮膚で発現している遺伝子とその配列を明らかにする予定である。
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