2013 Fiscal Year Research-status Report
TALEN法により疾患ゲノムを修復したiPS細胞を用いた自家臓器再生技術開発
Project/Area Number |
25640106
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
石丸 善康 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 学術研究員 (50435525)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 再生医療 / TALEN / CRISPR/Cas / iPS細胞 / 胚盤胞補完法 |
Research Abstract |
再生医療の実用化を推進するため、Transcription Activator-Like Effector Nucleases(TALEN)法またはCRISPR(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)/Cas法によるゲノム編集とiPS細胞による胚盤胞補完法を活用し、将来的にブタ生体内にヒト臓器作製を目的として、iPS細胞由来の臓器・器官作製の基礎技術開発をマウスで行った。TALENもしくはCRISPR/Cas法は、特定のDNA配列においてゲノム編集を高効率で行うことができるノックアウト法であり、本研究ではFGF10ノックアウトマウスの作製を行った。Golden Gate法によりFGF10遺伝子配列に対応するTALENを作製し、TALEN mRNAをマウスの受精卵にインジェクションし遺伝子改変マウスの選択を行った結果、四肢欠損のノックアウト個体を作製することに成功した。さらに、CRISPR/Cas法においても非常に高効率でノックアウト作製が可能となった。また、胚盤胞補完に用いるマウスiPS細胞の維持培養技術は、MEFをフィーダー細胞に用いて培養を行ったところ、良好な維持培養が可能となり、大量に同世代での細胞の凍結保存を行った。アルカリフォスファターゼ(AP)は,iPS細胞を含むすべての多能性幹細胞で高発現しており、多能性細胞に共通したマーカーとして広く知られているため、未分化細胞マーカーとしてAP染色を行った結果、その活性が確認された。今後、FGF10ノックアウトマウス由来の胚盤胞とマウスまたはラットiPS細胞による胚盤胞補完法により同種、異種動物個体内での四肢作製が可能か明らかにする。さらに、遺伝子疾患のiPS細胞をCRISPR/Casで遺伝子治療した後に、臓器を作製することも検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゲノム配列の決定により、任意の遺伝子をノックアウトあるいはノックインできるゲノム編集技術が近年開発されており、マウスにおいても効率よくノックアウトが可能となった。この技術と胚盤胞補完法を組み合わせることで、簡単に異種動物内に臓器を作製できることが想定される。現在、マウスを用いて実験を行っているが、少なくともノックアウト作製に関しては、非常に効率がよいことが明らかとなった。そこで、ゲノム編集を行った受精卵を培養し、胞胚期にさらにiPS細胞をインジェクションして、仮親に戻す方法を現在遂行している。この胚盤胞補完法により簡便に異種動物内での臓器作製が可能と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
TALENもしくはCRISPR/Casで作製したFGF10ノックアウトマウスとマウスまたはラット由来iPS細胞を用いたキメラマウスの生体に同種、異種動物の四肢が作製可能か明らかにする。さらに、ノックアウトマウスの体細胞からiPS細胞を樹立し、TALENまたはCRISPR/Casによる遺伝子異常のリプログラミングで正常化したiPS細胞とノックアウトマウスを用いたキメラマウスで正常な四肢が作製されるか示す。また、遺伝子の多様性に対し、TALEN、CRISPR/Casを用いた組織特異的エンハンサー領域の変異により遺伝子発現調節することで、iPS細胞が目的の組織以外にならないよう制御できるか明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
TALENもしくはCRISPR/Cas技術の有効性は、培養細胞においても遺伝子改変ができる点にある。例えば、遺伝的要因で疾患のある患者から体細胞を取ってきてヒトiPS細胞を樹立した場合、遺伝性疾患の原因となる遺伝子異常は、iPS細胞においても保持されているため、その原因遺伝子の変異をTALENもしくはCRISPR/Casにより欠損、挿入、置換することで正常な遺伝子に置き換え、正常なiPS細胞を得ることが必須である。この正常iPS細胞から異種間臓器・器官作製を行い移植に用いたり、直接体内に投与することで遺伝性疾患治療の発展に繋がると予想されるが、本年度はノックアウトマウスからのiPS細胞の作製及びTALENもしくはCRISPR/Caによる遺伝子の変異修復までに至っておらず、次年度行う予定としてその使用額が生じた。 次年度使用額及び翌年度助成金により、FGF10ノックアウトマウスの繊維芽細胞からOct3/4、Sox2、Klf4、c-Myc発現用レトロウイルスベクターを用いてiPS細胞の作製を行う。さらにGFP標識する。このFGF10遺伝子異常を保持したiPS細胞とFGF10ノックアウトマウスを用いたキメラマウスの四肢、肺は欠損するのに対し、TALENもしくはCRISPR/Casによる相同組み換えにより遺伝子型が正常化されたiPS細胞のキメラマウスでは、四肢と肺が正常に作製されるかGFPを指標に解析を行う。さらに、異種間動物での胚盤胞補完法を確立するため、ラットiPS細胞の作製も合わせて行う。
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