2013 Fiscal Year Research-status Report
暗闇で虫は何を見て眠り、目が覚めるのか?夜空の超微弱光が薄明薄暮性を支配する
Project/Area Number |
25660268
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
霜田 政美 独立行政法人農業生物資源研究所, 昆虫相互作用研究ユニット, 研究ユニット長 (80344000)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 光受容 / 概日時計 / チャバネアオカメムシ / 走光性 / 活動リズム / 薄明薄暮生 / 複眼 |
Research Abstract |
多くの昆虫が示す活動リズム「薄明薄暮性」の支配機構の一端を明らかにするために以下の実験を行った。①電流値で明るさを調整できるLED装置を用いて微弱光をチャバネアオカメムシに照射し、走光性や活動リズムを誘起する閾値を探索した。走光性は、我々が開発した赤外線トラッキングシステムを用いて、二次元オープンフィールド上での歩行活動について光照射に対する応答を検出した。また、活動リズムは、高感度アクトグラフを用いて直径4cmプラスチック容器内での微小動作を検出した。両実験から光応答行動を誘起する光強度が0.01ルクス以下であることを確認した。また、②微弱光受容部位の決定するために、複眼と単眼による光受容の影響を検討した。実験形態学的手法として、コーティング(特殊なマスカラ染料を使用)による複眼や単眼での光遮断実験を試みたが、再現性のある結果が得られなかった。さらに、③複眼における光受容体であるオプシンタンパク質ファミリーのcDNAクローニングを試みた。チャバネアオカメムシ頭部からRNAを抽出しcDNAを合成して、種間で高く保存されている領域を増幅した。その結果、オプシン遺伝子の部分配列を得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験①について、微弱光による走光性や活動リズムの誘起に成功したが、光量依存的な閾値の決定には至らなかった。実験②については、実験形態学的手法として、コーティングによる複眼や単眼での光遮断実験を試みたが、コーティング剤であるマスカラの剥離を完全に防止できず、再現性のある結果が得られなかった。実験③については、当初の計画通り、複眼における光受容体であるオプシンタンパク質ファミリーのcDNAクローニングを行い、オプシン遺伝子の部分配列を得ることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
実験①については野外実験を平行して実施しながら詳細な行動解析を進める。実験②については研究設計を見直す必要があることから、中止も含めて検討する。実験③については、まだ得られていないオプシン遺伝子についてcDNAクローニングを進めるとともに、定量PCR法により遺伝子発現の日内サイクルを調べる。また、当初の研究計画に沿って、実験④RNA干渉法による遺伝子発現のノックダウン実験、及び実験⑤遺伝子ノックダウン個体における光応答感受性低下の確認と行動レベルでの形質発現の有無を調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当研究所で維持しているチャバネアオカメムシ系統は10年以上にわたり累代飼育されているものであることから、系統純化が進み、遺伝的な偏りが生じて本来の活動リズムや光周性を失っている可能性が危惧された。そこで本研究では、毎年新たに野外からチャバネアオカメムシを捕獲して、系統樹立した上で研究に使用する計画を立てた。しかしながら、昨年は春季から夏季にかけて茨城県におけるチャバネアオカメムシ発生数が極めて少なく、採集した親から3世代以上の累代飼育後も実験に必要な個体数が得られなかった。このため特に実験①と②の研究推進ができず、やむを得ず、これらに関わる実験資材購入と研究補助員の雇用ができなかった。 昨年度実験が遅れた理由は、主に野外でチャバネアオカメムシを十分に捕獲できなかったことである。そこで次年度は、野外の採集場所を茨城県だけでなく、関東他県(特に発生数の多い千葉県や神奈川県)に足を伸ばし、野外系統の採集を行い、研究に必要な個体数を確保する。これにより、本来は初年度に行う計画だった実験①と実験②について、必要な実験資材の購入と研究補助員の雇用を行い、当初の目的を達成する。また、実験③から実験⑥については、当初の研究計画通りに進める。
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Research Products
(2 results)