2013 Fiscal Year Research-status Report
糸状菌エンドファイト-内生バクテリア間相互作用の解明とその利用
Project/Area Number |
25660273
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
成澤 才彦 茨城大学, 農学部, 教授 (90431650)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 嘉則 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存修復科学センター, 研究員 (50466645)
太田 寛行 茨城大学, 農学部, 教授 (80168947)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 共生 / 内生バクテリア / 接合菌類 |
Research Abstract |
下等菌類(接合菌類)、高等菌類(ディカリア)、そして偽菌類をそれぞれ85菌株(16属)、110菌株(45属)、そして20菌株(3属)を供試菌株とした。供試菌株の菌糸体よりDNAを抽出し、バクテリア16S rRNA遺伝子を標的としたプライマーセット10F-907Rまたは10FM-1507RMを用いたPCR法により内生バクテリアの検出を行った。10F-907Rのプライマーセットを用いたPCRの結果、下等菌類(接合菌類)、高等菌類(ディカリア)、そして偽菌類(卵菌類)において、それぞれ21%(18菌株)、1%(1菌株)、そして100%(20菌株)のPCR増幅を確認した。このことから、菌類内生バクテリアは、高等菌類(ディカリア)に比べ、下等菌類(接合菌類)において高頻度に検出される傾向があることが示唆された。また、10FM-1507RMを併用することにより、下等菌類(接合菌類)において、32菌株(38%)より内生バクテリアを検出できた。接合菌類において、32菌株中28菌株を同定した。同定されたバクテリアはすべてプロテオバクテリアに属しており、このうち、β―プロテオバクテリア綱に属するMortierella elongataより検出されている内生バクテリアの近縁種が16菌株となり最も多かった。また、M. vesiculosa 10DS89から検出されたDiplorickettsia属細菌は、マダニやムツテンヨコバイの細胞内共生バクテリアと85%の相同性を示し、菌類と節足動物の両方と関係を持つ可能性のある新規菌類内生バクテリアであると考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
菌類内生バクテリアは、宿主菌類の分類や生態系における働きを変化させる重要な要素の1つであると考えられる。しかしながら、これまでに菌類内生バクテリアのスクリーニングがなされた菌類は、菌類全体からみて極めて少数であり、また、そのスクリーニングは、接合菌類や子嚢菌類といった分類群ごとに行われ、それぞれのスクリーニング条件も異なっていた。そこで、本研究では、同スクリーニング条件下における下等菌類(接合菌類)、高等菌類(ディカリア)、そして偽菌類(卵菌類)の3つの分類群ごとの内生バクテリアの検出率を比較した結果、菌類内生バクテリアは、高等菌類(ディカリア)に比べ、下等菌類(接合菌類)において高頻度に検出される傾向があることを示すことが出来た。さらに、接合菌類においてPCR増幅が確認されたBurkholderiaceae科に属する内生バクテリアを20菌株獲得出来、菌類―バクテリア間の相互作用に関する研究モデル構築につながる結果となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の結果より、菌類の中では接合菌類において、より高い頻度で内生バクテリアが検出される傾向があることが示唆された。また、接合菌類から検出された29の内生バクテリアのうち15はMortierella elongataから検出されたBEFBに近縁なバクテリアであった。また、その宿主はM. elongataを含むMortierella属菌11菌株、Cunninghamella属菌2菌株、Radiomyces属菌1菌株、そしてCoemansia属菌1菌株であり、M. elongata以外の接合菌類も宿主とする可能性が示唆された。Mortierella属菌は土壌菌の中でも特に普遍的な菌類であり、一部は植物根部からの分離報告もある。その一方,動物の糞生菌としての一面も持ち多様な栄養特性を持つ菌群でもある。そこで、来年度は、このモデルを供試して植物ー菌類ーバクテリア間の相互作用解明を検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
試薬類としての使用を予定していたが、2ー3月時の培養室内空調の故障により、菌類の培養温度が維持できなくなり、当該年度内での使用が困難となった。 現状では、上記空調の故障も修繕が終わり、培養は継続している。5月半ばには、実験を終えることが可能となり、試薬類の使用が可能となる計画である。
|
Research Products
(3 results)