2014 Fiscal Year Research-status Report
暗黙的な看護技術獲得過程とその影響要因に関する理論構築
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25670931
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Research Institution | Tokyo Ariake University of Medical and Health Sciences |
Principal Investigator |
前田 樹海 東京有明医療大学, 看護学部, 教授 (80291574)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 雅子 東京有明医療大学, 看護学部, 准教授 (20563513)
北島 泰子 東京有明医療大学, 看護学部, 講師 (30434434)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 看護情報学 / 看護技術 / 看護教育 / 暗黙知 / 熟達過程 |
Outline of Annual Research Achievements |
患者の死期を予知する技術の獲得に関して、平成25年度に収集したデータに加えて追加の質問紙調査を実施した。それらのデータについて、死期が近いという情報に至るデータ処理過程ないしデータ収集過程、当該処理を可能とする技術の獲得過程、認知バイアスの可能性などの視点から多角的に分析を進め、情報科学、認知科学、心理学系の学会で発表を行い、他分野ないし学際領域の他の研究者らと意見交換を行った。結果として、技術習得過程は、その部分的な知識獲得の段階(=技術要素の習得)とその全体的な統合の段階(=ホリスティックな技術の完成)という二段階からなるという仮説を導出するに至った。これは、学校で教授される「すべての」形式知の習得の上に、実際の経験がそれらの暗黙的な全体性の獲得を促すことで看護師の真の技術習得がなされると仮定すると、現代日本の看護教育における「すべての看護技術は教授できまた習得可能である」という前提による教育の現実性と、経験が実力を表す指標として重視される実態、そして、経験のみから患者の容体変化を予測できる看護師が存在するという、一見すると矛盾しているように見える3つの事象が、技術獲得における部分と全体、形式と暗黙という対立軸上の座標として説明可能となることの帰結である。当該仮説を傍証するためのフォーカスグループインタビュー(以下FGI)の実施に先立ち、FGIを円滑に進めるためのデバイス(iOS版ファイルメーカアプリケーション)を開発した。FGIは参加者の自由な討議を通じてより豊かな情報を引き出すための技法であるが、他の参加者の意見に迎合したり、もしくは言いにくいなどの理由で、参加者個人特有の経験を引き出すことが場合によっては困難な場合、匿名で意見を述べたり選択肢式の設問に答えたりすることを可能にするものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度の計画は、①平成25年度中に収集したデータのさらなる解析ならびに学会等における有識者との意見交換による暗黙的な技術習得過程理論の構築と、②①の精練、精緻化を目的としたフォーカスグループインタビュー(FGI)において、参加者の意見を匿名で即時集約/集計するデバイスの開発ならびに実際のFGIの実施である。①については、ほぼ予定通り進行し、日本認知心理学会第12回大会(2本)、日本医療情報学会看護学術大会(2本)、日本心理学会(1本)で計5本の発表を行い、当該事象に関心のある看護学、認知科学系の研究者らと有用な討議を行った。②については、平成26年6月までに収集したデータを踏まえ、いかなる世代の看護師にも操作が容易という観点からハードウエアならびにソフトウエアの仕様の再検討プロセスに時間を費やしたため、平成26年度はデバイス開発を完了させるにとどまった。当該デバイスを利用した実際のデータ収集については平成27年度に行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
上記進捗のため、本研究プロジェクトは1年間延長し、構築した理論の精緻化と検証を目的としたFGIについては平成27年度に実施する。また、FGIの結果含め、平成26年度以降に本研究プロジェクトで新たに得られた知見についても27年度中に学会発表ならびに論文投稿によってすみやかに社会還元していく予定である。
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Causes of Carryover |
フォーカスグループインタビュー(FGI)によるデータ収集に先駆けて開発することになっていたデバイス開発における仕様策定に時間を費やした関係でデバイス自体の完成が26年度末となったため、FGI以降の計画を27年度に繰り下げたことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰越額に関しては、開発したアプリケーションを起動するための端末の購入代金、FGIの実施に際して発生する謝金、会場費、ファシリテーターの交通費、ならびに当該インタビュー結果を踏まえた成果の公開(論文ないし学会発表)に関わる費用に充当する。
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Research Products
(9 results)