2014 Fiscal Year Annual Research Report
Clostridium属細菌を用いた未利用バイオマスからのブタノール生産系の開発
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25701017
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
中山 俊一 東京農業大学, 応用生物科学部, 准教授 (90508243)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 発酵 / バイオマス / バイオテクノロジー / 応用微生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、セルロース系未利用バイオマスからの高効率ブタノール生産系の開発を目的とし、より高温域でブタノール発酵可能な菌株への育種と中温性セルロース分解菌の単離を試みた。UV照射により変異を誘発し高温域でもブタノール生産可能な変異株(RIFR91)を取得した。30°Cにおいて親株は40g/Lのグルコースから11.0g/Lのブタノールを生産可能であるが、32°C、34°C、36°C、38°Cと培養温度を上昇させるとそれぞれ6.9g/L、3.3g/L、1.7g/L、0g/Lへと減少した。一方、RIFR91の30°C、32°C、34°C、36°C、38°Cでのブタノール生産はそれぞれ11.2g/L、11.9g/L、10.8g/L、9.5g/L、2.3g/Lと36°Cという高温域でもブタノール生産が可能であった。興味深いことに、ブタノール生産速度もRIFR91では高く、親株では至適温度である30°Cで0.18g/L/hであったのに対し、RIFR91では34°Cにおいて0.39g/L/hと2倍以上高い生成速度を示した。さらには、セルロース分解菌であるC. thermocellumと混合培養した結果、34°Cにおいても親株と比較して1.5倍高い生成量を示し40g/Lの稲わらから6.2 g/Lのブタノールを生産し、その生産速度も向上していた。以上の様に、高温域で高効率にブタノール生産可能な変異株を取得することができた。一方、土壌中からの中温性セルロース分解菌のスクリーニングも行い、37°C3日間の培養でろ紙を高効率に分解する嫌気性中温性セルロース分解菌を含むコンソーシアを取得した。セルロース分解に寄与する微生物の単離を試み、当初10種類以上の微生物種が存在していたものから3種類の微生物からなるコンソーシアまで単離できた。本コンソーシアを用いて混合培養したところ、ブタノール生産を確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
セルロース系バイオマスを基質とした高効率ブタノール生産系の開発を目的とし、本年度では、ブタノール生産菌における耐熱化変異株を取得した。本育種株を用いることで、より高温域でのブタノール生産が可能になったこと、ブタノール生成速度が親株と比べて2倍向上したこと、稲わらを基質としたセルロース分解菌との混合培養でも生産量・生産速度が向上したこと等高効率にブタノール生産可能であることが明らかとなった。 一方、ブタノール生産菌との混合培養でろ紙からブタノール生産可能な中温性セルロース分解コンソーシアを見出した。菌叢解析と組み合わせ比較したところ、セルロース分解に寄与する微生物を3種まで絞りこむことができた。前年度までは中温性セルロース分解菌は見出していたものの、ブタノール生産菌との混合培養ではセルロース基質であるろ紙からのブタノール生産は見られなかった。本年度はこの課題を解決する混合培養適合型中温性セルロース分解菌の取得に至っており、ほぼ当初の計画通り進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、耐熱化したブタノール生産菌の取得と異種タンパク高発現用ベクターを構築している。今後、各種セルラーゼ発現プラスミドを構築し耐熱化した育種株に導入し、糖化力を補強できるブタノール生産菌を育種する。育種株とセルロース分解菌を混合培養することで、糖化効率・ブタノール生産速度が向上するかを検討する。また、耐熱化株のゲノム解析網羅的な転写解析により耐熱化機構の解明も試みる 前年度までに、中温域でろ紙を高効率に分解しかつブタノール生産菌との混合培養でブタノール生産可能な3種類の微生物種からなるコンソーシアを取得している。今後、1種類の微生物へと単離しより高効率に分解する菌株への育種を試みる。また、継続して新規セルロース分解菌のスクリーニングを行う。 前年度までは試験管レベルでの糖化・発酵試験を行ってきた。今後は、既存のセルロース分解菌および新規にスクリーニングしたセルロース分解菌と育種したブタノール生産菌を用いてファーメンターを用いた糖化発酵試験を行い、セルロース系基質からの高効率ブタノール生産系の確立を目指す。
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Causes of Carryover |
本年度は研究が期待通りの進捗したことと、次年度の物品費購入に充てるため次年度使用額を生じさせた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額を用いて、発酵のスケールアップのためのジャーファーメンターの購入に充てる。
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