2015 Fiscal Year Annual Research Report
Clostridium属細菌を用いた未利用バイオマスからのブタノール生産系の開発
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25701017
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
中山 俊一 東京農業大学, 応用生物科学部, 准教授 (90508243)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 発酵 / バイオマス / バイオテクノロジー / 応用微生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、セルロース系未利用バイオマスからの高効率ブタノール生産系の開発を目的とし、昨年度取得した耐熱性変異株(RIFR91)の諸性質を調べるとともに、ブタノール生産菌の熱感受性機構についてメタボローム解析とRNA-Seq法を用いて網羅的に解析した。RIFR91はタンパク分泌量が向上しており、さらにはxylanseとXyloglucanase活性が親株よりも約1.5倍向上していた。このRIFR91を用いて稲わらからブタノール生産すると親株よりも生産量が向上するが、この原因はこれらヘミセルラーゼ活性の上昇であることが示唆された。ブタノール生産菌は37℃で培養すると生育はするものの発酵能が著しく低下する。昨年度までのメタボローム解析ではアデニン添加によって発酵能が改善することを見出しているが、生理的な解析の結果より37℃では胞子形成が促進していること、アデニン添加によって胞子形成が遅延しその結果発酵能が改善することを見出した。さらには網羅的な転写解析の結果、37℃では胞子形成に関与する遺伝子群の発現量が向上していること、アデニン添加時には胞子形成を抑制する遺伝子の発現が誘導されていることを明らかにした。 セルラーゼ高発現プラスミドを構築しブタノール生産菌に導入し、セルラーゼ高発現株の取得も試みたが、高いセルラーゼ活性を示す形質転換体の取得には至らなかった。 一方、昨年度までに取得している中温性セルロース分解菌群に対して変異処理を行い、37℃で効率的にろ紙を分解する変異株を取得した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
セルロース系バイオマスを基質とした高効率ブタノール生産系の開発を目的とし、昨年度までにブタノール生産菌における耐熱化変異株を取得した。この変異株は耐熱性の他にヘミセルロース分解に関与する酵素の分泌も向上しており、稲わらを基質とした際に生産量の向上も見出された。この変異株を宿主とし、昨年度までに構築した宿主ベクター計を用いることでセルラーゼ高発現株の取得を試みており今後の成果が期待される。さらには、熱感受性機構の解明をきっかけとし、胞子形成機構について新規な知見を得ることができた。一方、中温性のセルロース分解菌の単離には至っていないが、中温性セルロース分解コンソーシアは取得している。 以上の様に、ブタノール生産系の開発とともに学術的な知見を得ており、ほぼ当初の計画通り進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、耐熱化したブタノール生産菌の取得と異種タンパク高発現用ベクターを構築している。今後、各種セルラーゼ発現プラスミドを構築し耐熱化した育種株に導入し、糖化力を補強できるブタノール生産菌を育種する。育種株とセルロース分解菌を混合培養することで、糖化効率・ブタノール生産速度が向上するかを検討する。また、耐熱化株のゲノム解析や網羅的な転写解析により耐熱化機構の解明も試みる。さらには、胞子形成に関連する遺伝子の発現および破壊により熱による胞子形成機構についての解明も行う。 前年度までに、中温域でろ紙を高効率に分解しかつブタノール生産菌との混合培養でブタノール生産可能な3種類の微生物種からなるコンソーシアを取得している。今後、1種類の微生物へと単離しより高効率に分解する菌株への育種を試みる。また、継続して新規セルロース分解菌のスクリーニングを行う。 前年度までは試験管レベルでの糖化・発酵試験を行ってきた。今後は、既存のセルロース分解菌および新規にスクリーニングしたセルロース分解菌と育種したブタノール生産菌を用いてファーメンターを用いた糖化発酵試験を行い、セルロース系基質からの高効率ブタノール生産系の確立を目指す。
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Causes of Carryover |
本年度は研究が期待通りの進捗したことと、次年度の物品費購入に充てるため次年度使用額を生じさせた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額を用いて、遺伝子発現量を比較するためのリアルタイムPCRの購入に充てる。
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