2013 Fiscal Year Annual Research Report
mono-like Si結晶におけるシード境界からの転位発生メカニズムの解明
Project/Area Number |
25706018
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
沓掛 健太朗 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (00463795)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 太陽電池 / 結晶工学 / 結晶成長 / 格子欠陥 / シリコン / 結晶粒界 / 転位 / モノライク |
Research Abstract |
本研究は、モノライクSiについて、シード境界から転位が発生するメカニズムを解明し、転位密度を低減した結晶を実現することを目的としている。モノライク法は、ルツボ底に敷いた複数の単結晶Siをシードに用いて擬似単結晶Siを低コストで製造する、太陽電池用の新しい結晶成長方法である。しかし、結晶育成中にシードの境界から発生する転位が重大な問題となっている。 本研究ではこの目的達成のため、次の4つの研究項目を設定する。(1)シード境界の構造の組合せを網羅する回数の結晶成長実験。(2)PLイメージを用いた転位分布評価による、シード境界構造が転位発生へ与える影響の解明。(3)微視的な構造の影響分を特定するための、有限要素応力解析による応力集中の影響分の見積。(4)TEMを用いた転位発生箇所とその構造の特定による微視的な転位発生機構の解明 平成25年度では、上記研究項目のうち、(1)(2)に集中的に取り組んだ。(1)シード境界の構造の組合せを網羅する結晶成長実験に向けて、それぞれのシード境界を形成するためのシード構造を系統的に設計し、種結晶を作製した。その種結晶を用いて、10cm角のインゴットを作製し、良好なモノライク結晶を得るための成長条件を取得した。(2) PLイメージを用いた転位分布評価による、シード境界構造が転位発生へ与える影響の解明においては、顕微PLイメージを用いた転位および電気的特性の定量評価を検討した。本研究ではPLイメージに顕微鏡を組み合わせることで、高い空間分解能での評価を行なうことを特徴としている。理論的な検討として、本研究では有限要素法によるキャリア分布の計算を取り入れ、顕微PLイメージによる電気的特性の定量評価を可能とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要のように、平成25年度では2つの研究項目(1)シード境界の構造の組合せを網羅する回数の結晶成長実験。(2)PLイメージを用いた転位分布評価による、シード境界構造が転位発生へ与える影響の解明。を計画通り実施した。 研究項目(1)に対しては、結晶成長条件の取得および数回の結晶成長実験を実施した。成長実験の回数は年度当初に予定した回数を行なうことはできなかった。この理由は、種結晶を当初計画よりも結晶成長に適した形状に設計し直したため、また、研究協力者の所有の結晶成長炉の移設などのためであった。しかし、すでに種結晶の作製を終え、結晶成長条件も取得しているため、平成26年度では順次結晶成長実験を行なう予定である。また平成25年度中に成長した結晶の解析結果においても、転位発生メカニズムの解明につながる知見を得ており、順調に進んでいると考える。 研究項目(2)においては、まず顕微PL装置を用いた計測システムを構築した。励起光の均一性、イメージングカメラの定量性の評価、励起光およびPL用のフィルターの選定、結晶の表面パッシべーション方法の検討を経て、当初計画した評価方法として十分な性能、感度を得ることに成功した。ただし、カメラ性能については後述のように性能が不十分であるため、平成26年度に高性能カメラを導入する予定である。さらに、同装置の方法を用いた転位および電気的特性の評価について、有限要素法によるキャリア密度分布の計算を取り入れ、定量的な評価方法を確立することができた。このことは当初の研究計画を超えた成果を得たと考えている。特に顕微鏡とPLイメージを組み合わせた装置は、世界でもまれな非常にユニークな装置であり、この装置を用いた定量評価手法を確立できたことは本研究の大きな成果の一つである。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究経過は、当初の研究計画通りに進んでおり、今後も計画通りに研究を進める予定である。以下に、平成25年度の研究成果を反映させた平成26年度以降の研究の推進方策を研究項目ごとに示す。 (1)シード境界の構造の組合せを網羅する回数の結晶成長実験:平成25年度に種結晶の設計・製作は終えているため、平成26年度以降ではそれらの種結晶を用いてシード境界構造を系統的に変化させた結晶育成を順次行なう。 (2)PLイメージを用いた転位分布評価によるシード境界構造が転位発生に与える影響の解明:マクロPLおよび顕微PLイメージを利用して、ウエハサイズから顕微鏡サイズまで転位の分布を追跡する。同時に平成25年度にて構築した電気的特性の定量評価を実施する。 (3)微視的な構造の影響分を特定するための有限要素応力解析による応力集中の影響分の見積:有限要素応力解析によって、シード境界の存在によってもたらされる応力集中の大きさを、シード境界の構造ごとに定量的に計算する。 (4)TEMを用いた転位発生箇所とその構造の特定による微視的な転位発生機構の解明:TEM観察によってnmオーダーで転位発生箇所を特定する。同時に、シード境界と転位の微視的構造を特定し、転位発生機構をミクロ視点で解明する。 以上で得られた成果を総合し、転位密度を低減したモノライクSiを作製する。さらにこの結晶を用いて太陽電池セル(10cm角)を作製し、本研究の成果を実証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の研究計画では、顕微PLイメージ装置用に高感度カメラを購入する予定であった。しかし、実際にデモンストレーション用の同型カメラを用いて様々な測定試験を行って検討した結果、同型カメラの性能は本研究における転位分布評価に対して不十分であることがわかった。そこで平成25年度の学術研究助成基金助成金を次年度に使用し、本研究の目的を達成するために十分な性能の高感度カメラを購入し、顕微PLイメージ装置へ実装する。 平成25年度の学術研究助成基金助成金からの次年度使用額を平成26年度において使用し、より性能の高い高感度カメラを購入する予定である。すでにデモンストレーションによって性能調査は終えており、同型カメラを用いることで、本研究の目的を達成するための顕微PLイメージ装置として十分な性能を得ることが可能である。また、同型カメラを購入するための費用配分として、結晶成長実験に使用する材料の見直しを行ない、本研究を実施する上で支障の無い範囲で安価な材料への変更を行なった。
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Research Products
(13 results)