2014 Fiscal Year Annual Research Report
mono-like Si結晶におけるシード境界からの転位発生メカニズムの解明
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25706018
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
沓掛 健太朗 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (00463795)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 太陽電池 / 結晶工学 / 結晶成長 / 結晶欠陥 / シリコン / 結晶粒界 / 転位 / モノライク |
Outline of Annual Research Achievements |
モノライク法は、ルツボ底に敷きつめた複数の単結晶Siをシードに用いて擬似単結晶Siを低コストで製造する、太陽電池用の新しい結晶成長方法である。本研究は、シード境界から転位が発生するメカニズムを解明し、転位密度を低減した結晶を実現することを目的とする。 この目的達成のため、次の研究項目を設定する。1.シード境界の構造の組合せを網羅した結晶成長。2.PLイメージングを用いた転位分布評価。3.有限要素応力解析による応力集中の影響見積。4.TEMを用いた転位発生箇所とその構造の特定による微視的な転位発生機構の解明。平成26年度では、当初計画の1.2.に取組むとともに、平成27年度以降予定の3.も開始し、次の成果を得た。 1.では、境界の構造を系統的に設計した種結晶を用いて10cm角のインゴットを作製した。これらのインゴットは2.-4.の研究に用いる。ただし実験の一部は、平成27年度にて実施する。2.では、転位および粒界の電気的特性を顕微PLイメージングにより定量評価する方法を提案し、その有用性や応用性を示した。定量的な評価のため、有限要素法によるキャリア分布計算を導入し、計算および実験との対比手法を提示した。これらは、太陽電池動作環境に近い条件下での欠陥物性評価法の開発として、意義ある成果である。3.では、モノライクSiの結晶方位が転位に働く応力に与える影響を有限要素応力解析によって調査した。はじめに、応力解析に必要な、弾性スティフネス係数の計算、結晶モデルの構築、応力成分の抽出方法について検討し、実験結果を良く再現する一連の解析法を得た。次に、結晶方位の影響を調べ、結晶成長方向とそれに垂直な方向の方位では影響が異なることを見出した。この知見は、モノライクSiの転位密度低減に対して良い指針となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要の記述のように、平成26年度では当初計画の研究項目1.シード境界の構造の組合せを網羅した結晶成長。2.PLイメージングを用いた転位分布評価。および、平成27年度の研究項目であった3.有限要素応力解析による応力集中の影響見積。を実施した。 1.では、結晶成長条件の取得および、その条件を利用した結晶成長実験を複数回実施した。しかし、予定した成長実験は一部未消化であった。この理由は、研究協力者の所有する結晶成長炉の不具合などである。そこで本研究目的達成のため、研究計画とは別の研究協力者のもとにおいても結晶成長実験を行える環境を整え、予備的な実験を行なった。その結果、良好な結果を得ており、平成27年度では未消化の結晶成長実験を順次行なう予定である。またこれまでに成長した結晶の解析結果においては、転位発生メカニズムの解明につながる知見を得ており、順調に進んでいると考える。 2.では、顕微PLイメージング装置に高性能カメラを導入した。その結果、従来に比べて100倍程度高い感度でPLを検出することが可能となった。また顕微PLイメージングによる転位および粒界の電気的特性の評価について、有限要素法によるキャリア密度分布計算を取り入れ、定量的な評価方法を確立した。さらにこの方法の誤差や適用範囲なども明らかにした。これらは当初の研究計画を超えた成果と考えている。 3.では、モノライクSiの結晶方位や粒界配置が応力の分布と大きさに与える影響を明らかにするため、有限応力計算を行なう。これまでに、応力計算に必要な、弾性スティフネス係数の計算、結晶モデルの構築、応力要素の抽出方法の検討を終えており、初期結果を得ている。これらは平成27度予定の内容であり、当初計画に先行した成果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では目的達成のため、次の4つの研究項目を設定する。1.シード境界の構造の組合せを網羅した結晶成長。2.PLイメージングを用いた転位分布評価。3.有限要素応力解析による応力集中の影響見積。4.TEMを用いた転位発生箇所とその構造の特定による微視的な転位発生機構の解明。平成25,26年度では、1.2.3.を実施した。以下に、これまでの研究成果を反映させた平成27年度の研究計画を示す。 1.当初の研究計画では、平成26年度中に終了する予定であったが、成長炉の不具合などにより未実施分があり、平成27年度においても引き続き実験を行なう。実験条件などは前年度までに取得したものを使用する。 2.平成26年度に導入した高感度カメラによって、より鮮明かつ高感度のPLイメージを取得することが可能となった。この顕微PLイメージ装置を利用して、平成27年度においても、本研究で作製したウエハ評価を順次進める。 3.当初計画では平成27年度から実施予定の研究項目であるが、平成26年度から応力計算に取りかかり、すでに、応力計算に必要な弾性スティフネス係数の計算、結晶モデルの構築、応力要素の抽出方法の検討を終えた。本年度からは、各種パラメータを変化させて計算を行なう。特に、実際に作製した結晶との比較を重視し、計算を進める。 4. 2.にて特定した転位発生箇所をTEMを用いて観察し、粒界と転位の構造的な関連を明らかにする。TEM試料作製および観察については、研究協力者の指導を仰ぐことで適切に研究を進める。
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Causes of Carryover |
上記の研究実績の概要のように、平成26年度では当初予定した結晶成長実験の一部が未実施となった。この結晶成長用の研究費を次年度へ繰り越したため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記のように次年度使用額は結晶成長実験のための費用である。この費用による結晶成長実験は本研究の目的達成には不可欠であるため、平成27年度の結晶成長実験費用として計上し、実験にあたる。上記の今後の研究の推進方策のように、平成27年度にて平成26年度で予定した実験は問題なく実施できる体制・環境にあるため、次年度使用額は平成27年度にて結晶成長実験にて滞りなく使用する。
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Research Products
(15 results)