2013 Fiscal Year Annual Research Report
補償光学による高解像度惑星撮像モニター観測システムの構築
Project/Area Number |
25707007
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
渡邊 誠 北海道大学, 理学研究院, 特任助教 (10450181)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 補償光学 / 波面センサー / 惑星観測 / 地上観測 / 光学赤外線天文学 / 天文観測機器開発 |
Research Abstract |
補償光学による高解像度惑星撮像モニター観測システムの構築のために、惑星観測用大気ゆらぎ補償光学装置の開発研究を遂行した。本年度は、従来の恒星(点光源)ではなく惑星本体(面光源)を参照光源として用いた、大気ゆらぎで歪められた光の波面を測定する面光源用波面センサの開発を進め、視野絞り付き波面センサの試作と実証試験を行った。その結果、実験に使用した視野絞り付き波面センサは、波面伝播の計算機シミュレーションでは波面センサへの入力波面に対して有効な応答出力が得られたのに対し、北海道大学1.6m望遠鏡に搭載して月を参照光源として行った波面測定実験ではシミュレーションと異なり小さな応答しか得られないことが分かり、応答感度を上げるための技術検討が必要なことが明らかとなった。 また、計画している惑星観測用多層共役補償光学システムの性能見積もりを行うために、望遠鏡設置サイトである北海道名寄の天文台上空の大気ゆらぎ強度の高度プロファイルとその変動の測定を行った。測定には、MASS-DIMM(Multi-Aperture Scintillation Sensor with Differential Image Motion Monitor)装置を用い、2013年9月から2014年02月にかけて全18夜のデータの取得に成功した。その結果、このサイトでは平均的に全大気ゆらぎの内、52%が地表層に、17%が高度0.5km付近に、16%が高度2kmに集中していることが明らかになった。このことから、地表層の大気ゆらぎによる波面誤差を補償光学システムにより補正することによって、補正の有効な観測視野サイズを広げることが可能なことが明らかになった。 また、既存の可視光マルチスペクトル撮像装置を高解像度観測に対応させるため、拡大撮像用カメラレンズユニットの設計を行い、レンズとレンズマウントを製作した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
視野絞り付き波面センサの試作と実証試験については、当初計画通り、計算機シミュレーションと望遠鏡に搭載しての波面測定実験を行うことができた。ただし、測定実験ではシミュレーション結果とは異なる結果が得られたため、さらなる技術検討が必要となった。 また、計算機シミュレーションによる多層共役補償光学システムの性能見積もりとシステム概念設計に関しても、望遠鏡サイトの大気ゆらぎ強度の高度プロファイルの測定結果が得られたことにより、補償光学システムの実際的な構成についての大まかな検討と性能についておおよその見積もりを得ることができた。 可視光マルチスペクトル撮像装置の高解像度モード用カメラレンズの製作についても、計画通り、製作することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
視野絞り付き面光源用波面センサについて、本年度に明らかになった入力波面に対する低い応答を改善するために、翌年度も波面測定方法の詳細検討・シミュレーションおよび波面測定精度の見積もりと測定実験を引き続き行う。その結果を元に、システム実機における波面センサの検討を行う。 さらに、視野絞り付き面光源用波面センサを複数個用いた惑星観測用多層共役補償光学システムのより実際的な構成を検討し、大気ゆらぎモデルを入れた計算機シミュレーションを行ってシステムの詳細な性能見積もりを行う。その結果から、製作するシステム実機の波面センサの個数、波面センサの素子数、可変面鏡の補正素子数とストローク、制御バンド幅を決定する。そして、補償光学システムの全体設計を行い、それを、光学系、機械系、電気系、制御ソフトウェアの項目に分離して、それぞれ詳細設計を行う。波面センサや可変形鏡・ティップティルトマウントについては、単体での動作試験・性能試験も進める。 本年度製作した高解像度モード用カメラレンズを可視光マルチスペクトル撮像装置へ導入し、性能試験を行う。また、これを用いて、ティップティルト成分の測定実験を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
高解像度モード用カメラレンズのホルダとマウントの機械加工部品を製作する際に、若干の小物部品の製作を納期の都合から次年度製作に変更したためである。 高解像度モード用カメラレンズを可視光スペクトル撮像装置へ導入する際のジグ部品の製作と合わせて未製作のレンズホルダマウント部品も同時に製作する予定である。
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