2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25707034
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡本 亮 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10435951)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 量子光学 / 量子計算 / 量子測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、多光子を用いたボソンサンプリングの実現を目指す。この実現には、従来の実験で用いられてきた方法をそのまま光子数を増やして拡張しただけでは、必要な時間・空間的なリソースが非現実的な規模になってしまうため不可能である。そこで、本研究では、ボソンサンプリング系を複数光子が空間的に分布したパラレル型の系から、時間的に分布したシリアル型の系に変換することで系をコンパクト化する。さらに、光子を時間的に一定間隔で出力する光源を実現、これに組み込むことで時間リソースの問題も解決する。H26年度は、(1)高性能伝令付き単一光子源の構築、(2)光子時間制御系の構築と評価、(3)光子状態測定系の構築の3つの項目に関して研究を進めた。項目(1)の高性能伝令付き単一光子源については、H25年度に検討を進めていた、群速度整合により2光子干渉性が高められる方法を用いて光子対源を構築し、光子対発生量について厳密に評価を行った。その結果、この方法は、2光子干渉性を高めることが可能であるものの、光子対発生量が少ないため、変換効率を高める工夫が必要であることが分かった。項目(2)に関しては、H25年度は、ループ構造からの光子の出力タイミング制御部の設計の改良を行っていた。そこで、H26年度は、その改良した設計に沿って、実験系の構築を行った。改良した設計では、電気光学素子と、音響光学素子を組み合わせて用いる。そこで、それぞれの素子の性能を精密に評価した。さらに、ループ構造内の遅延をシングルモード光ファイバで行うため、高効率ファイバカップリングの実現を目指した。その結果、99%以上という非常に高いファイバカップリング効率を得ることに成功した。項目(3)に関しては、FPGAを用いた系を立ち上げた。光子検出器からの出力をFPGAシステムに接続、光子計数が可能なことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H26年度は、まず、高性能伝令付き単一光子源の実現に関して、群速度整合により高い2光子量子干渉性を実現できる方法を検証した。そのために、新しく光子対源を構築し、光子対生成量を従来の方法と定量的に比較した。その結果、新しい方法を用いるには、どの程度光子対生成効率を向上させれば良いことがわかった。これにより、伝令付き単一光子源のさらなる高性能化への道筋を明らかにすることができた。また、光子時間制御系については、昨年度改良した設計を元に、構築・動作検証を行った。個々の素子の性能評価を行い、設計通りの性能が発揮できることが分かった。さらに、99%以上という非常に高い効率でのファイバカップリングの実現に成功した。これにより、ループ構造に光ファイバを使用しても、カップリング効率による光子の損失は無視できるほど小さくできることが分かった。光子状態測定系については、FPGAを用いた系を立ち上げて、光子計数が可能なことを確認、次年度以降、このシステムを用いた光子状態測定が可能なことを実証した。
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Strategy for Future Research Activity |
以上のように、高性能伝令付き単一光子源については、群速度整合による新たな手法の検証が完了し、光子対生成効率の向上が必要なことが分かった。そこで、今後は、光子対生成効率を向上させる方法について検討を進める。またそれと平行して、従来の光子対発生法を用いて、多重化伝令付き単一光子源の構築とその出力光子数分布の評価を進める。また、光子時間制御技術に関しては、これまで構築したループ構造を用いて時間的に並んだ2光子間の量子干渉を実現し、その明瞭度を評価する。さらに、H26年度に立ち上げたFPGAシステムと組み合わせることで、シリアル型量子干渉システムを実現し、ボソンサンプリングの検証実験を行う。
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Causes of Carryover |
以上で述べたように、H26年度は、光子のシングルモードファイバへのカップリング効率の向上に成功した。この実現のために、本実験の計画時には、新規に高性能なファイバカプラを購入する予定であったが、光ファイバとレンズを交換するだけで、上記目標を達成することができた。そのため、当初予定していた、ファイバカップラ及びその関連部品(150万円×3ヶ所)の購入が不要になり、次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
これまでの研究で、より高速な電気光学素子のドライバがあれば、光子遅延用のファイバ長を短くすることができ、ファイバ内での光子の損失を抑えることが可能なことが分かっている。そこで、これまで使用していたドライバの後継機として発売が予定されているより高速な動作が可能な機種(1式50万円)を2台購入する。また、研究の進展に伴い、時間的に並んだ光子の測定には、光子検出器のデッドタイムの影響を除去するために、複数の光子検出器を組み合わせ必要があることが分かった。そこで、光子検出器(1台100万円)を、2台購入する予定である。残額については、光子対発生効率向上に必要な装置及び光学素子に使用する予定である。
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