2013 Fiscal Year Annual Research Report
液晶の自己組織化を活用する無水プロトン伝導体の創製
Project/Area Number |
25708013
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉尾 正史 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60345098)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | カラムナー液晶 / 双連続キュービック液晶 / ナノ相分離 / プロトン伝導 / 燃料電池 |
Research Abstract |
本研究の目的は、液晶の自己組織性を生かして、連続したナノプロトンチャンネル構造を有する無水プロトン伝導体を構築することである。そのために、精密な分子設計、ナノ相分離構造制御、およびマクロ配向制御を行う。 酸塩基イオンコンプレックス形成を活用するイオン性液晶の開発:塩基性分子として、ジエタノールアミン構造を有するジアルコキシフェニルアミド誘導体を設計・合成した。この分子は、単独でサーモトロピックヘキサゴナルカラムナー液晶性を発現した。一方、酸性分子としてベンゼンスルホン酸を上記の塩基性分子と混合モル比を変えて複合化した結果、カラムナー液晶相に加えて、3次元に連続したイオンチャンネル構造を形成する双連続キュービック液晶相および層状のスメクチック液晶相を発現させることができた。これらの液晶相におけるプロトン伝導性を櫛形金電極を用いた交流インピーダンス法により測定した。無水条件下で10-4 Scm-1のイオン伝導度を達成した。 双性イオン構造を有するイオン性液晶の構築:アンモニウム型スルホベタイン構造を有するトリアルコキシベンジル化合物を設計・合成した。この化合物は単独でサーモトロピックヘキサゴナルカラムナー液晶性を発現した。これにベンゼンスルホン酸を複合化することにより、双連続キュービック液晶性が発現することを見出した。これは、ベンゼンスルホン酸が解離したベンゼンスルホネートアニオンが双性イオン性液晶のアンモニウム部位と対を形成し、プロトンが双性イオン性液晶のスルホネート基と相互作用したためと考えられる。このような双連続キュービック液晶相を発現する複合体は、無水条件下で10-4 Scm-1のプロトン伝導性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に従って、アンモニウム型スルホベタイン構造を有する双性イオン液晶を開発し、ベンゼンスルホン酸と複合化することで3次元イオンチャンネル構造を形成するプロトン伝導性双連続キュービック液晶を世界で初めて構築することに成功した。また、酸塩基コンプレックス形成を鍵とする新しいプロトン伝導性液晶の開発にも成功し、期待したプロトン伝導度を達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従って、新規の無水プロトン伝導性液晶を構築することができた。これらの液晶電解質を用いて燃料電池を構築できるかについて研究を進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
液晶電解質の伝導性を評価するために高額なアナライザを購入することを計画していたが、本年度に購入したより安価なデバイスアナライザと既存の誘電体装置とを組み合わせて使用することでより高度な伝導特性の評価ができることが判明し、購入機器の変更が生じたため。また、想定していた煩雑な有機合成の実験が効率よく行えた結果、合成試薬・溶媒・分離精製用部材費を節約することができたため。 燃料電池作製および性能評価のための測定機器として、電極作製のための蒸着装置および電子負荷装置の購入に充当する予定である。また、ナフィオン系プロトン伝導性液晶材料の合成に必要なフッ素系試薬の購入に充当する予定である。
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