2013 Fiscal Year Annual Research Report
レーザー反応場における高速化学気相析出のダイナミクスを利用した完全配向成長の実現
Project/Area Number |
25709069
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
伊藤 暁彦 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (20451635)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 化学気相析出 / レーザー工学 / セラミックス / コーティング / 配向制御 |
Research Abstract |
化学気相析出法は、気相からの析出反応により基材をコーティングする手法であり、合成温度や炉内圧力を変化させることで、多彩な構造制御が可能である。被覆性が高いことから、実用コーティング法として幅広く使用される。 本研究課題は、従来の熱プロセスでは難しいが、レーザー反応場で活性化したプロセスに、高過飽和原料蒸気を導入することで、セラミックスコーティングおける気相からの完全配向成長技術を達成し、レーザー反応場での気相成長の学理を追究することを目的とする。具体的には、多結晶基板上への完全c軸配向アルミナ (α-Al2O3) 膜の合成プロセスを確立する。硬質材料であるα-Al2O3は、結晶配向により機械的特性が変化し、実用上ではc軸配向が求められる。c面は原子稠密面であり成長速度が低く、下地層なしでは気相からのc軸成長は不可能とされてきた。 本手法は、高い原料供給量下でも高い反応性を保持できるため、強い配向性を持った膜の高速気相析出が可能である。これまで、α-Al2O3の合成において、供給原料の過飽和度が、配向成長に与える影響が顕著であることを明らかにしてきた。本年度は、多結晶AlN基板上にα-Al2O3を成膜し、合成条件が結晶配向や微細組織に与える影響を明らかにした。配向度を、X線回折強度を基に配向係数 (Texture coefficient) として評価したところ、原料気化温度、成膜温度および炉内圧力を最適化することで、ほぼ完全にc軸配向したα-Al2O3膜を気相から合成できることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
原料気化温度、成膜温度および炉内圧力を最適化することで、配向係数90%のほぼ完全にc軸配向したα-Al2O3膜を気相から合成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
各結晶面に完全配向したα-Al2O3膜を多結晶AlN基板上に合成し、結晶配向成長プロセスを議論するためのより多くの基礎的なデータを得る。さらに、電顕による組織観察の面から成長過程を検討する。レーザー反応場における高速化学気相析出・配向成長プロセスを、結晶成長論と照らし合わせながら解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の進捗は当初の計画以上であり、順調に遂行している。次年度使用額が生じた理由は、試料合成に用いる有機金属原料の費用が抑えられたことと、当初本年度に実施する予定であった高飽和度原料安定供給装置およびその場分光観察用光源の導入について、現有装置で十分な成果が得らつつあったことから、来年度以降とした方が研究が円滑に遂行できると判断したためである。これらの経費を次年度に計上することとした。 本研究課題を一段と推進するため、本年度はより多くの試料合成を行う計画であることから、これらの経費を平成26年度に使用する。また、真空装置の部品交換を最小限にしていたため、その分を次年度に実施する必要がある。以上のように、平成26年度請求額とあわせ、平成26年度の研究遂行に使用する予定である。
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