2015 Fiscal Year Annual Research Report
医学・農学的高度利用を目指した定量的初期胚評価法の確立
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25712035
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山縣 一夫 近畿大学, 生物理工学部, 准教授 (10361312)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 初期胚 / 胚の質 / ライブセルイメージング / 定量解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、生殖医療や家畜繁殖の分野では不妊が大きな問題になっている。その原因として、高齢化や環境ストレスによる配偶子や初期胚の質低下が想定されている。「質低下」の実体としては、主に染色体異常によることが近年の研究からわかってきた。妊娠率を向上させるためには、初期胚の質、特に染色体の正常性を確実に評価する技術開発が急務である。本研究では、申請者がこれまでに開発を行ってきた「初期胚ライブセルイメージング技術」を応用し、染色体正常性について定量的かつ科学的根拠を持って評価できる技術へと発展させる。具体的には、画像・時間分解能の高い顕微鏡システムを構築し、染色体の異常を定量化するソフトウエアを開発する。さらに、染色体の構造異常や異数性を検出する蛍光プローブを開発する。得られた画像情報と移植結果をもとに相関性解析や多変量解析を行うことで「胚の質」をあらわすような指標を導いてゆく。 平成27年度は、特にソフトウエアの改良に関して成果を得た。これまでに申請者はHistone H2B-mCHerryの蛍光画像をもとに、核や染色体を自動認識できるアルゴリズムを開発していた。その計算方法やコンピューターの改造を行うことで、計算速度の大幅アップを達成した。また、東京大学の小林徹也博士、慶応大学の舟橋啓博士らとさらに精度よく形や大きさを定量化でき、かつ認識ミスが生じた際に簡便に修正できるアルゴリズムとGUI(Graphical User Interface)を開発した。合わせて、核を一つ一つ自動追尾できるようなアルゴリズムを開発し、割球の細胞系譜を追跡できるようになった。これらに加えて、本年度は直接染色体をラベルするプローブだけでなく、細胞周期や細胞内ATP濃度を定量化できるプローブの開発に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上述のように、平成27年度は画像解析用のソフトウエアの開発や、新規蛍光プローブの開発を行った。しかし、本来の計画としては、この年度より各種モデルマウスや他哺乳動物種、ヒト余剰胚を用いた解析で成果を上げていることとなっていた。現状はこれらに着手はしているが、まとまったデータが得られる段階に達していない。その原因の一つとしては、昨年度より現所属先である近畿大学生物理工学部に異動し、新たに研究環境をセットアップする必要性があったこと、研究以外に大きくエフォートが削られるようになったことが挙げられる。26年度後半から27年度前半に遅れた分に関しては、27年度後半からやや取り戻してきているという実感はあるが、必ずしも成果の論文発表に繋がっていないことから、27年度もやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度後半には研究室のセットアップが終了し、学生たちの指導体制も整ってきた。そこで、本年度はそれまでに構築した上記ハード、ソフト、プローブを用いて、マウスをモデルに実際に「胚の質」の検討を行ってゆく。体外受精胚だけでなく顕微授精胚、さらには高齢マウス由来胚についてライブセルイメージングによる観察を行う。得られた大量の多次元画像データおよび特徴量をもとに、多変量解析等の相関性解析により、胚の質を評価しうる新たな指標(変数)を導く。また、指標の高い胚、そうでない胚などに分けてマイクロアレイなどの遺伝子発現解析を行ない、「質の高さ」とはいったい何か?また、質の悪さの原因は何か?を探ってゆく。また、ウシ・ブタなどの家畜動物胚、そして最終的には同意の得られたヒト余剰胚を用いて、指標の正当性の検討を行う。
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Research Products
(9 results)