2013 Fiscal Year Research-status Report
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25740059
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
笹尾 俊明 岩手大学, 人文社会科学部, 准教授 (90322958)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 循環型社会 / 廃棄物処理 / 広域圏 |
Research Abstract |
都道府県単位で導入されている産業廃棄物(以下、産廃)税や搬入規制が産廃のフローに与える影響について、パネルデータを用いた計量経済分析を行った。産廃税の効果に関する分析では、県外搬入を除く場合と含む場合の両方に注目し、産廃の品目別に与える影響も分析した。その結果、現在の産廃税には廃棄物の排出量や最終処分量の抑制効果がほとんどないことに加え、搬入抑制効果もないことを明らかにした。これらの結果は産廃品目別に分析した場合にも、一部の品目を除いて同様であった。また産廃税や搬入規制が産廃の広域移動に与える影響についての分析では、産廃搬入への課徴金や搬入禁止措置は最終処分目的では導入自治体の期待どおり産廃の搬入抑制をもたらす一方、産廃税の一部の課税方式では中間処理目的での流出を増加させている可能性があることを明らかにした。また各都道府県の産廃政策の導入要因についての分析も行い、最終処分についてはもともと県外からの搬入量の少ない自治体が積極的に搬入抑制措置を行う傾向にあることなどを示した。これらの研究成果については、国際環境税学会、3R国際学会、環境経済・政策学会など関連する学会で発表するとともに、洋書所収論文として出版予定である。 さらに、以上の研究成果や研究手法を有害廃棄物や災害廃棄物の広域処理に適用するための基礎的な調査も行った。有害廃棄物の広域処理の代表例として、PCB廃棄物に注目し、その処理を行っている日本環境安全事業(株)の北海道事業所への現地調査を行った。また災害廃棄物の広域処理に関する資料収集を行い、その現状と課題について論文にまとめ、掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
循環型社会形成のための廃棄物政策について、計量経済学の手法を用いて政策評価するという点では一定の成果をあげ、その成果を3R International Scientific Conference on Material Cycles and Waste Managementや環境経済・政策学会など国内外の学会で報告するとともに、学術論文の形で公表することができた。 一方で当初の計画では、災害廃棄物や不法投棄された廃棄物など近年特に注目されている特別な措置を必要とする廃棄物の広域処理を主な対象に分析を進める予定であったが、この点に関しては当初の計画をやや下回る達成状況である。その主な理由は以下の2点である。 1つは、災害廃棄物や不法投棄廃棄物などに関する公表資料では計量分析のために必要なデータが充分に整備されておらず、その関係で広域処理の効率性や公平性の評価を行うための適切な手法の検討に時間を要しているためである。もう1つは、従来から研究代表者が進めてきた産業廃棄物税や産業廃棄物の搬入規制など、通常の産業廃棄物の政策評価に関して、本研究との関係から追加的な分析の必要性が生じ、その成果のとりまとめに予想以上の時間を要したためである。 以上のような理由から、「やや遅れている」との自己評価を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれまで行ってきた産業廃棄物分野での計量経済分析手法を、災害廃棄物や不法投棄廃棄物など近年その処理のあり方が社会的な課題となっている廃棄物に適用すべく、関係するデータの収集や分析手法の検討を引き続き行う。データについて、具体的には災害廃棄物では自治体単位、不法投棄廃棄物では不法投棄サイト単位での処理量や処理費用等に関するパネルデータの作成を進める。この際、同一期間での時系列データが入手できない可能性があるが、その場合にはさしあたりクロスセクションデータとして整備し、可能な分析を行う。一方で、「現在までの達成度の理由」で述べた1つ目の理由が依然として改善されない場合、これらの研究が当初の予定どおりに進まない可能性も起こりうる。そのような場合には、通常の一般廃棄物あるいは産業廃棄物を対象として、広域処理の妥当性に関する計量経済分析を行う。 最終的には、循環型社会形成のための広域圏のあり方について、効率性と公平性の両観点から評価を行うための考え方を整理した上で、そのための評価手法を提案する。そして、特定の廃棄物や地域にその評価手法を適用し、循環型社会形成に向けた政策的インプリケーションを示したい。 以上の研究成果は環境経済・政策学会、廃棄物資源循環学会など関係する学会等で報告するとともに、国内外の学術雑誌に投稿する予定である。
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[Book] Rural and Urban Sustainability Governance(担当は4章"Effects of local waste taxation and trade restrictions on industrial waste flow in Japan")2014
Author(s)
Kota Asano, Mitsuo Takada, Ken-Ichi Akao, Ayumi Onuma, Kyohei Matsushita, Toshiaki Sasao, Atsushi Maruyama, Kentaro Yoshida, Yukichika Kawata, Yoshiaki Iiguni, Teruyuki Shinbo, Xiaobo Lou, Hisako Koura, Sachiko Morishige, Nobuhiko Matsumura, Hiroto Inoi, Tomoko Miyagawa, Lata Shakya, Masahiro Maeda 他
Total Pages
332(59-80)
Publisher
United Nations University Press