2013 Fiscal Year Research-status Report
高血圧症における生体内鉄代謝機構変化の分子機序解明と治療法への応用
Project/Area Number |
25750044
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田島 壮一郎 九州大学, 大学病院, その他 (10579460)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 高血圧症 / 鉄 / hepcidin |
Research Abstract |
アンジオテンシンII(Ang II)は、高血圧症や心腎血管疾患の病態に重要な役割を担っている。高血圧症患者では、鉄貯蔵マーカーである血清フェリチン値が高値を示すことが報告されている。我々は、6週齢のC57BL/6JマウスにAng IIを4週間持続投与により高血圧モデルマウスを作成し、十二指腸からの鉄吸収機構および鉄吸収抑制ホルモンhepcidinに焦点をあてて解析を行った。またAng II投与群については、8週齢からvehicleもしくはオルメサルタン(ARB)を2週間経口投与した。3群(対照(CONT)群、Ang II群、Ang II+ARB群)で比較検討した。Ang II群ではCONT群に比べて血圧は有意に上昇し、Ang II+ARB群ではその上昇は抑制された。一方、血清フェリチン値は、Ang II群で有意に増加しており、ARB投与により上昇は抑制されCONT群と同程度であった。肝臓のhepcidin遺伝子発現ならびに血清hepcidin-25濃度はAng II群で有意な低下を認め、ARBの投与によりCONT群と同程度に回復した。またhepcidinの発現に関与するBMP6およびC/EBPαの遺伝子発現もAng II群において低下を認めた。さらに鉄の主たる吸収部位である十二指腸における鉄吸収蛋白質divalent metal transporter (DMT1)、ならびにferroportin(FPN)の発現はAng II群で増加を認めた。次に臓器鉄濃度について、肝臓ならびに脾臓の鉄濃度は3群間で差を認めなかったが、腎臓鉄濃度と腹腔内マクロファージ鉄濃度はAng II群で有意に上昇していた。以上の結果から、高血圧症においては肝臓におけるhepcidin産生の低下を介して、十二指腸鉄輸送体制御に関与し、また臓器鉄分布を変化させることで生体内鉄代謝異常に関与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は、現在までに高血圧モデルマウスを作成し、鉄吸収抑制ホルモンhepcidinの発現が低下していることを明らかにした。さらに十二指腸における鉄吸収蛋白質(DMT1、FPN)の発現増加を認め、十二指腸からの鉄の吸収量の増加により、腎臓および腹腔内マクロファージにおいて鉄量が増加していることを明らかにしているので、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
高血圧モデルマウスにおいて、腎臓および腹腔内マクロファージにおいて鉄量が増加していることを明らかにしたが、その詳細なメカニズムについては不明である。そこで、今後は鉄代謝関連蛋白質を調節するIRP (iron regulatory protein)に焦点をあてて解析を行い、高血圧症における臓器鉄分布の変化のメカニズムについて明らかにする予定である。
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Research Products
(5 results)