2014 Fiscal Year Research-status Report
自然体験プログラムによる体験者の現実適応と個性化へのプロセス
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25750272
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
渡邉 仁 筑波大学, 体育系, 助教 (70375476)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 自然体験プログラム / アドベンチャー / メンタルヘルス / 生きる力 / 道徳観 / 不適応状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究は、思春期から青年期を対象に自然体験プログラムを実践し、自然体験プログラムによる体験者の現実適応(社会的に望まれる態度や行動)と個性化(内的成熟や心理的成長など)へのプロセスを明らかにすることであった。 まず、研究課題1.自然体験プログラムに期待される現実適応の指標については、当初の計画通り3年間の研究期間を最大限に活用しながら、初年度から引き続き平成26年度も先行知見の整理を行った。 研究課題2.自然体験プログラムによる現実適応に与える影響に関しては、実際のプログラム実践に対して実証的研究を行った。具体的には、キャンプ体験が被災児童のメンタルヘルス等に与える影響を検討し、「やる気次元」の向上を確認した。また、「ストレス反応次元」の下位尺度「怒り感情」の増加を確認したが、これは被災経験による抑圧されていた感情が、非日常の枠組みにおいて開放されたものと推察し、健全なメンタルヘルスの変容への重要なプロセスと考えられた。さらに、児童を対象としたアドベンチャーキャンプ体験が道徳観に及ぼす影響について検討を行った。その結果、道徳観の探索的因子分析により5因子が抽出され、そのうちの「法遵守性」においてキャンプ前後で有意な向上が認められた。 このように前者からは、直線的に望ましい適応状態に向かうのではなく、プログラム後にある種の不適応状態を経て、内的成熟に向かうことが示唆された。後者からは、これまであまり検討されていなかったキャンプと道徳観の関係において、重要な示唆を得ることができた。 研究課題3.自然体験プログラムによる個性化プロセスの事例的検討については、現在、調査対象となる実施団体への研究協力の打診を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究課題2.自然体験プログラムが現実適応に与える実証的研究については、当初予定とは異なるキャンププログラムの参加者を調査対象としたが実施することができた。しかし、研究課題3.自然体験プログラムによる個性化のプロセスの事例的検討については、研究上、適当な事例を調査することができなかったため、総合的に達成度はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、研究課題1.について、海外文献を重点的に収集をおこなっていく。また、研究課題3.自然体験プログラムによる個性化プロセスの事例的検討と研究課題4.自然体験プログラムの現実適応と個性化の関係性の検討については、事例データの収集の可能性を高めるため、当初予定していた実施団体以外にも依頼をしていく予定である。
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Causes of Carryover |
国際学会等に参加し、資料収集等を行うことを予定していたが、日程が合わず出張を見合わせたため、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国際学会等における資料収集についての旅費に充てる予定である。
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