2015 Fiscal Year Annual Research Report
イスラーム金融を利用した伝統的経済制度の再活性化とその現代的意義をめぐる研究
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25760004
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
長岡 慎介 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (20611198)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 現代イスラーム経済論 / イスラーム金融 / イスラーム法 / 伝統制度の再活性化 / ザカート / ワクフ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、イスラーム金融を用いた伝統的イスラーム経済制度(ザカート、ワクフ)の再活性化に関する資料収集・フィールドワーク、国際会議での研究発表を下記のとおり実施した。 (1)資料収集:2015年8~9月に、アメリカ合衆国の米議会図書館、シカゴ大学にて、本研究課題に関するアラビア語関連文献および資料の収集を行った。 (2)国際会議での研究発表:2015年8月に京都大学で開催された第9回イスラーム経済ワークショップ、および2015年9月に上智大学で開催された第5回NIHUプログラム・イスラーム地域研究国際会議、2015年9月にマレーシア国民大学で開催された第6回イスラーム・文明・科学国際シンポジウムにて本研究課題に関する研究発表を行った。 (3)論文の公表:『イスラーム世界研究』第9巻(2016年)にて、シンガポールのワクフの再活性化に関する論文を、村上勇介・帯谷知可編『融解と再創造の世界秩序』(青弓社、2016年)にて、本研究課題全体に関する総括論文を公表した。 *研究期間全体を通して、伝統的なイスラーム経済制度の再活性化の取り組みに着目し、イスラーム金融がどのようにコミュニティの福祉や社会生活の改善に寄与しようとしているのかを実証的に考察したが、現地調査や資料解析を通して次第に判明してきたのは、イスラーム金融が自らの社会的役割を重視し、新たな事業に取り組んでいる以上に、その事業対象となっている他のイスラーム経済アクターが、より主体的に社会に根ざした新たなイスラーム経済システムの形成に寄与しうる萌芽的な実践を始めているということであった。このような実践は、イスラーム金融を頂点に戴く従来からのイスラーム経済システムの構造の転換を迫る画期的な取り組みであり、そこに金融資本主義化を乗り越える新たなイスラーム経済システムの構築可能性を見出すことができた。
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Research Products
(9 results)