2013 Fiscal Year Research-status Report
なぜイバン族ばかり感染するのか?:新型マラリアへのクロスディシプリナル研究
Project/Area Number |
25760006
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
益田 岳 京都大学, 地球環境学堂, 研究員 (00455916)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 分子生物学的手法 / イバン族 / エスノグラフィー / アノフェレス / 森林マラリア / 気象観測 / 継代飼育 |
Research Abstract |
問題系の整理として京都大学医学研究科にて蚊の体内の病原体を分子生物学的手法によって検出している研究者と研究会議をもち、LAMP法等の簡易かつ高精度な手法について学んだ。LAMP法の開発元から専門家を招き調査手法について検出キット使用方法や独自検出キット作成について学んだ。小型軽量なサーマルサイクラー(PCR機器)を見つけ、国内の複数の専門家に利用の妥当性について意見を聞いた。 マレーシア学会においてイバン族の研究者と知り合い、研究会議をもち、文献の紹介や調査計画へのコメントを頂き、問題意識の進化と調査計画の具体化を行った。 イバン族の基本的なエスノグラフィー資料を研究者の助言も参考にしながら収集した。 現地調査は、2013年夏にマレーシア・サラワク州において現地予備調査を実施した。患者が集中している、州都より1日かかる川上の地域に出向いた。患者データベースから、アクセス可能なロングハウス数件を割り出し、実際に訪問した。その際、改良トラップを試験動作させ、気象観測装置も稼働、フィールド調査時の問題点を洗い出した。得られたデータをもとに翌年度の調査への方向性の修正等を検討した。 長崎大学にてトラップの性能改良のためのアノフェレス蚊等を用いた実験を複数回行い、森林マラリア蚊に適したトラップの製作を試行した。長崎大学で継代飼育していたアノフェレス蚊のダイラス種が途絶えてしまったため、3度にわたりベトナムより子孫を導入。3度めには自らベトナムの飼育施設で飼育手法と環境を学び、技術移転を支援している。長崎大学のダイラス種は現在まだ飼育環境下での継代飼育が安定していないため、飼育水の紫外線殺菌システムや餌の調整、風による水中への酸素導入、2段階自動照明による夜明け日没の再現など、様々な技術的介入を行いながら改良を続けている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
長崎大学での継代飼育蚊の断絶という予想外のアクシデントがあったが、これに対応することで蚊媒介性感染症の地域研究に必須な実験・再現環境の作成スキルが身についた。その分トラップの改良実験はできない時期が半年以上続いているが、次年度前半には長崎大学の継代飼育担当者とも連携して、さまざまな技術や手法の導入と改良をはかり、安定する方向に持って行くめどが年度末にはついた。
|
Strategy for Future Research Activity |
マラリアの調査は人間側はよくなされている。しかし、原虫を運ぶ蚊の調査が非常に立ち遅れている。この研究では、対策がとくに遅れている森林型マラリアに特化したモニタリング技術=効率的なマラリア蚊トラップの作成を目指している。そのため、蚊トラップの改良については、蚊の嗅覚などの研究において世界的権威であるオランダのワーゲニンゲン大学タッケン研究室と連絡をとり、東南アジアの森林マラリア用蚊トラップの改良について意見交換のため、長崎大学熱帯医学研究所の中澤先生とともに2014年4~5月に出張する。森林マラリア蚊トラップは非常に成果が出にくいことで知られている。私は森林マラリア蚊のダイラス種においては、多すぎる刺激でも飽和し反応しなくなるという現象があると仮定し、蚊の各種化学的刺激あるいは熱刺激に対しての反応レンジを見極める研究が必要であると提案し、それに必要な実験を協議する予定である。
|
Research Products
(9 results)