2014 Fiscal Year Research-status Report
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25770001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
近藤 智彦 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (30422380)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アカデメイア派 / 懐疑主義 / ヘレニズム哲学 / ローマ哲学 / キケロ / ストア派 / プラトン / アリストテレス |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) キケロ『アカデミカ』をはじめとするアカデメイア派懐疑主義の基礎資料の研究を、昨年度に引き続き進めた。 (2) 6月に、アカデメイア派研究の世界的権威の一人であるジョン・グルッカー氏(イスラエル・テルアビブ大学)を招聘し、日本国内の古代哲学研究者も交えて研究会を開催した。本研究会では、キケロの哲学的著作における翻訳の問題(ギリシア哲学のキケロによるラテン語への翻訳、後世におけるキケロの著作の諸近代語への翻訳)という興味深い主題についてグルッカー氏の講演にもとづいて意見を交換したほか、キケロ『善と悪の究極について』V.76-95の講読セミナーを二日間にわたって行った。この講読箇所では、幸福に対する徳の自足性という古代倫理学の中心問題をめぐって、(a) ストア派、(b) 古アカデメイア・ペリパトス派を自任するアンティオコス、(c) アカデメイア派懐疑主義の立場をとるキケロが三つ巴となる形で興味深い議論が展開されているが、この箇所の資料的な重要性と解釈上の問題点が明らかになったことは本セミナーの貴重な成果であった。 (3) ヘレニズム・ローマ哲学全般に関わる研究として、昨年度に引き続き「アプロディシアスのアレクサンドロス『運命について』日本語訳・注(II)」を発表したほか、概説書『新プラトン主義を学ぶ人のために』のなかで、ストア哲学と新プラトン主義の歴史的・哲学的関係を解説するコラムを担当した。また、様々な分野の哲学研究者に向けて、現代英語圏哲学の幸福論を参照点としながらストア派の倫理学の新たな解釈を試みる研究発表「ストア派は内面的な幸福を説いたか?」を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
キケロ『アカデミカ』の全訳・註解については、出版を目指して作業を進める方針を固めた。 アカデメイア派内外の錯綜した論争状況の把握に難航していたが、その主要な資料となるキケロの哲学的著作の書法に関して、ジョン・グルッカー氏との意見交換などを経て理解を深めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
キケロ『アカデミカ』の全訳・註解については、当初は紀要等で発表する予定であったが、出版社との交渉により出版の目途が立ったため、途中経過のホームページ上への公開は行わないこととする。 平成27年4~5月にイスラエルに訪問して研究発表を行うとともに、再度ジョン・グルッカー氏をはじめとするイスラエルの古代哲学研究者と研究交流を行う予定である。
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Research Products
(3 results)