2014 Fiscal Year Research-status Report
デカルトによる批判的受容を背景にしたピエール・シャロン人間学に関する哲学史的解明
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25770002
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
津崎 良典 筑波大学, 人文社会系, 助教 (10624661)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | デカルト / シャロン / モンテーニュ / ヘレニズム哲学 / 人間学 / 国際研究者交流 / フランス / イタリア |
Outline of Annual Research Achievements |
シャロンからデカルトにかけて「人間」についていかなる考察と言説がなされたのか(なされなかったのか)、この人間学的な問いに哲学史的な観点から検討を加えるという本研究の基礎作業として、初年度に引き続き本年度は、シャロン関係の諸文献の収集・読解・検討を継続した。具体的な研究成果は以下のとおりである。 1/シャロンとデカルトの一次文献に関して、概念上・主題上の対応関係を指摘しうるテクストの選択・確定を多くの二次文献に依拠しながら行った。これは昨年度からの継続作業であり、一定の区切りをつけることができた。ただし、従来の研究で指摘されてこなかった対応関係については、作業は完了していない。 2/テクスト上の対応関係についてその位置情報と文脈とを示すコンコーダンスの作成を継続した。 3/シャロンとデカルトを比較するうえで有効な主題群であり、また、本研究で暫定的に〈道徳的人間学〉と呼称しているもののうち、広義の教育論(とりわけ読書論)について本年度は集中的に検討を行った。この「(主体の自己に対する)教育」という主題(これは申請書において予想済みの主題であった)については従来の研究ではまったく指摘されてこなかった鉱脈であり、それを探索するうえでの見通しを10月に開催された国際研究集会にてフランス語で発表した。参加者のうちアンドレ・シャラック氏(パリ第一大学准教授)から好意的な意見が寄せられ、また、この鉱脈を探索するうえで情報交換を行った結果、具体的に展開するための展望が得られた。そのほかに、申請書において予想した主題群のうち、「知恵」、「情念」、「心身関係」、「徳/悪徳」、「即自/対自」、「判断力」についても、研究発表にまでは至らなかったものの、来年度の研究に資する基礎的作業を進めた。もう一方の主題群である〈政治的人間学〉については検討することが叶わなかったため、次年度の課題とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
シャロン『知恵について』は大部の著作であり、また、16世紀の些か難解なフランス語で書かれているため、その内容分析に時間がかかっている。そのために、分析すべき主題ないし概念の包括的なリスト作成に遅れが生じている。ただし、応募時の書類にも記載したとおり「初年時と二年時には研究進捗に多少の遅れが生じうるかもしれないが、遅くとも研究最終年度にはシャロン哲学の人間学に関するかぎりでの全体像を描写すること」は現時点で可能であると判断している。また、本年度は本研究について、アンドレ・シャラック氏(フランス・パリ第一大学准教授)ならびにジャンニ・パガニーニ氏(イタリア・東ピエモンテ大学教授)と意見交換し、有益な助言を受けたので、これをもって来年度の研究の推進に役立てる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
大部の著作であるシャロン『知恵について』の内容分析の速度をあげる。デカルトと比較すべき項目(コンコーダンスの項目に相当)の選定作業の速度をあげる。それに応じて、申請書に記載したように、最終年度にあたる来年度は、デカルトとシャロンの比較対照の作業(いわゆる解釈の提示)に一定の区切りをつける。またその過程で、在ローマのアッカデーミア・デイ・リンチェイ(日本学士院に相当)で開催予定の国際学会において、「好奇心」という概念を中心に形成される問題群に関するかぎりでのデカルトとシャロンの相違に関する研究発表をおこなう。来年度は、この準備に相応の時間を割く予定である。
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