2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25770069
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
宮 信明 早稲田大学, 付置研究所, 助手 (50636032)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 落語 / 三遊亭円朝 / 正本芝居噺 / 素噺 / 真景累ケ淵 / 怪談牡丹燈籠 |
Research Abstract |
(1)速記本を中心とした文字テクストの考察では、三遊亭円朝作『真景累ケ淵』と、円朝以前の正本芝居噺の名残をとどめる二代目三遊亭円生作『怪談累草紙』(二代目三遊亭円楽「月下奇談 根岸の雨宿」、八代目林家正蔵「親不知の場」など)とを比較することによって、正本芝居噺時代の『真景累ケ淵』ついて検討した。また『怪談牡丹燈籠』には、この噺の古態をとどめる、点取りと呼ばれる円朝自身の手になる覚書が残されており、それを速記本と比較することにより、正本芝居噺と素噺それぞれの特徴(話法や演出、様式など)を抽出した。 (2)実際に演じられた高座の分析では、現在、正本芝居噺を継承しているほぼ唯一の噺家である林家正雀師による正本芝居噺・素噺の映像記録会を、2013年12月12日(木)と2014年2月6日(木)に、東京文化財研究所の実演記録室において開催した。第1回は、『真景累ケ淵』のうち「お累の自害」(素噺)と『怪談累草紙』のうち「親不知の場」(正本芝居噺)を、第2回は『真景累ケ淵』のうち「深見新五郎」(素噺)と「水門前の場」(正本芝居噺)を実演いただいた。正本芝居噺、素噺双方の映像を記録することによって、両者を比較するための基礎資料を作成し得たことは、本研究の大きな成果である。また、研究協力者の飯島満氏(東京文化財究所無形文化遺産部音声・映像記録研究室長)のご尽力により、記録会が広く一般に公開されたことは、芸能を記録するという性質からも、研究成果を公開するという観点からも、非常に意義深いものであったといえよう。 (3)同時代人の証言の調査では、林家正雀師に三遊亭円朝、三遊亭一朝、八代目林家正蔵の正本芝居噺について、素噺との比較のもと①演目②伝承③演出④話法⑤演技についてお話をうかがうとともに、『諸芸新聞』『新編都草紙』『都にしき』等の同時代資料のデータ化を完了し、その分析に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
正本芝居噺と素噺の比較検討、正本芝居噺よりも素噺を優先重視してきた「近代」落語あるいは落語の「近代」の問い直し作業、三遊亭円朝の話芸(噺の方法や内容、演出)の考証の3点につき、速記本を中心とした文字テクストの考察、実際に演じられた高座の分析、同時代人の証言の調査とも、おおむね順調に進展している。 今年度の直接経費のうち人件費・謝金とその他の実支出額が、交付決定額の内訳に比べてかなり下回っているのは、幸運にも映像記録会を東京文化財研究所で開催できる運びとなり、会場利用費や設営費、カメラマン等の人件費・謝金を節約できたことによる。 また、同時代資料調査の過程で、1970〔昭和45〕年2月から隔月で計6回、神田岩波ホールで開催された<芝居噺 林家正蔵の会>の記録映像(「おふじ松五郎」「戸田の渡し」「鰍沢」「五月雨坊主」「真景累ケ淵 新五郎の捕り物」「めだか」「菊模様皿山奇談 楼門の場」「真景累ケ淵 水門の場」「新助市五郎」「名月若松城」「怪談累草紙 親不知の場」「粟田口霑笛竹 国府台の場」の12演目)のオリジナル16mmフィルムが、関係者のご遺族によって保管されていることが判明。現在、同資料はアクセスが困難な状況となっているため、オリジナルの16mmフィルムをデジタル化し、著作権者の許諾を得たうえで、演劇博物館や東京文化財研究所等でその映像を公開することを、平成26度の研究計画に追加する。そこには、テレビ放送・書籍刊行時にはカットされた道具の設営・撤去の様子、開演前の稽古の模様も映り込んでいるだろう。それらも含めて、実際に演じられた高座の分析を通じて正本芝居噺の特徴(話法や演出、様式など)を明らかにする。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)速記本を中心とした文字テクストの考察では、『菊模様皿山奇談』と『粟田口霑笛竹』を中心に研究を進める。『菊模様皿山奇談』『粟田口霑笛竹』はともに速記本刊行以前に合巻や人情本としても仕組まれており(「菊文様皿山奇談」「花菖蒲澤の紫」「今朝春三ツ組盞」など)、それら正本芝居噺の名残をとどめるテクストと、素噺として文字テクスト化された速記本を比較することにより、それぞれの特徴(話法や演出、様式など)を明らかにする。 (2)実際に演じられた高座の分析では、引き続き、東京文化財研究所の実演記録室において、林家正雀師による正本芝居噺・素噺の映像記録会を開催する。今年度は計3回の実施を企画しているが、正本芝居噺としては「鰍沢」「双蝶々」『菊模様皿山奇談』のうち「楼門の場」『粟田口霑笛竹』のうち「国府台の場」などを、素噺としては『名人長二』『名人競』などを予定している。また、1970〔昭和45〕年2月から隔月で計6回、神田岩波ホールで開催された<芝居噺 林家正蔵の会>の記録映像を、オリジナルの16mmフィルムからデジタル化し、テレビ放送・書籍刊行時にはカットされたであろう道具の設営・撤去の様子、開演前の稽古の模様をも含めて分析する。 (3)同時代人の証言の調査では、当時の新聞や雑誌、単行本などを博捜することによって、いまだ報告されていない同時代の証言を発掘する。また明治期の演芸資料(新聞・雑誌・単行本)だけでなく、早稲田大学演劇博物館所蔵の安田文庫、伊勢辰文庫所収の寄席芸に関する同時代資料についても調査を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
少額端数のため使用できず。 物品費等に含めて使用予定。
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Research Products
(6 results)