2013 Fiscal Year Research-status Report
1920年代の日本モダニズム文学における「東洋」・「伝統」言説の形成
Project/Area Number |
25770073
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
仁平 政人 弘前大学, 教育学部, 講師 (20547393)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 日本近代文学 / モダニズム / 伝統の創造 |
Research Abstract |
・『川端康成への視界』第28集(2013年6月)に、論文「「ダダ主義」と「新感覚派」のあいだ―川端康成「新進作家の新傾向解説」再考―」を発表した。この論文では、川端の「新感覚派」理論と呼ばれる評論を分析することを通して、1920年代におけるアヴァンギャルド文学言説の論理を、翻訳学の視点を交えながら捉え直した。同論文で提示した日本モダニズム/アヴァンギャルド文学言説に関する視点は、本研究全体にとっても、理論的な前提となるものである。 ・『昭和文学研究』第68集(2014年3月)に、論文「「チエホフ」という地下室―尾崎翠「地下室アントンの一夜」をめぐって―」を発表した。この論文では、尾崎翠の最後の小説「地下室アントンの一夜」を分析するにあたり、日本におけるチェーホフの翻訳・受容の状況を整理し、尾崎が、1920年代までの日本のチェーホフ言説をモダニズム的に書き換えることによって、自らの文学を生み出していることを明らかにした。同論文は、1920~30年代のモダニズム文学と同時代言説との交通を解き明かしたという点で、本研究と深く関わるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本近代文学館での二度にわたる調査を中心として、これまでに1920年代のモダニズム文学に関わる文芸雑誌・同人誌のうち、『文芸時代』『文党』『葡萄園』『新興文学』『ダムダム』『ゲエ・ゲムギゲム・プルルル・ギムゲム』『近代超克』『虚無思想研究』の調査を行い、「東洋」「伝統」に関連する言説の散在を確認し、その傾向について分析を進めている。また、当時のモダニズム文学言説の主要な担い手となった作家・批評家の著作も、順次検討を進めている。 他方、研究の前提となる問題として、日本のモダニズム文学言説が持つ「翻訳」的性格を理論的に検討し、その成果を論文で発表している(論文「「ダダ主義」と「新感覚派」のあいだ―川端康成「新進作家の新傾向解説」再考―」)。 ただし、2013年9月から弘前大学附属図書館が工事中であることも関係して、まだ調査できていない文芸雑誌も複数残っている。それらの調査・検討は、次年度以降の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の作業を継続して、1920年代のモダニズム文学に関わる雑誌の言説を調査し、それらの中で「東洋」・「伝統」に関わる文脈が価値化されている事例を収集する。特に今年度は、主要な文芸雑誌・同人誌のほかに、地方で刊行されていたモダニズム関連の同人誌も調査対象とする。その上で、収集された言説について、他領域との関係も視野に入れて、個別的な分析を行う。 なお、これまでの調査で、モダニズム的な「東洋」「伝統」言説が特に集中的に現れる文脈も確認できつつある(例えばダダイズムや、生田長江を中心とした「超近代主義」など)。したがって、広範な雑誌調査を引きつづき継続するとともに、それらの文脈に焦点を据えた調査・分析も今年度からは行うこととしたい。 研究成果は、学会発表および学術論文を通して公開を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予算は計画に従っておおむね使用したものの、モダニズム関連資料等の購入経費の余りとして、(資料購入には足りない程度の)若干の金額が残った。 資料(モダニズム関連の古書類)の購入経費に追加して、使用することとしたい。
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Research Products
(2 results)