2014 Fiscal Year Research-status Report
日本近代文学における〈文学賞〉の意義と作用―『改造』懸賞創作を中心に
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25770091
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
和泉 司 豊橋技術科学大学, 工学部, 講師 (50611943)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 文学懸賞 / 懸賞作家 / 中央と地方 / 日本語文学 / 『改造』 / 日本の植民地 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画では、一九二八年から三九年まで雑誌『改造』で募集・発表されていた文学懸賞・『改造』懸賞創作が、日本の文学の展開に対してどのような影響を及ぼしたか、その異議と作用を解明することを目的とした。 一九二〇年代後半、講談社の『キング』創刊や、〈円本〉ブームに見られるように、教育の普及によって活字メディアの大衆的な娯楽・教養としての需要が高まっていた。その一方で新人作家の発掘・育成は、同人誌グループへの参加や既存作家のもとでの徒弟制的修業といった閥的な手段に偏っており、特に地方で文学活動を行っていた人々や既存の文壇や出版社にコネクションを持たない人々にとっては障壁となっていた。本研究計画では、そのような人々の中から登場した『改造』懸賞創作に当選者について、その経歴やテクストを調査・分析し、当選者たちが作家として文壇にデビューし、どのように〈作家〉としての自分の位置を確立・発展させていこうとしたかについて、そしてその際の困難について検討した。主な対象としては、第3回当選者の芹澤光治良、第4回当選者の田郷虎雄、第9回当選者の龍瑛宗である。 上記の作家以外の当選者についても、これまで不明な部分が多かった経歴、当選前後の発表テクスト、戦中・戦後に置かれた状況・活動についての資料収集・調査を行い、一名の不明者(第九回当選者の渡邊渉)を除いて、当選者の動向を把握することが出来た。 また、日本統治時代の台湾における日本語による文学運動、およびその戦後(1945年以降)の動向、及び文学賞との係わりを考える単著として、邱永漢の諸テクストの検討も行い、未検討テクストを発見し、その調査・分析結果を論文にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26(2014)年度より、勤務校が代わり、工学系単科大学に所属することになった。研究環境上改善された点は多いが、勤務校の性格上、図書館所有の文学関連資料がほとんどなく、また前年度は近距離にあった図書館・資料館へのアクセスが出張しなければ行けなくなったため、資料収集・分析の進度に遅れが出てしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
現勤務校所属が二年目となり、環境にも慣れてきたので、効率的な出張・調査計画を立てられるようになった。それを踏まえ、『改造』懸賞創作とその関連周辺情報をまとめるための資料収集を継続し、その資料をまとめる。また、平成27(2015)年度より、1一九四五年~五〇年代における文学懸賞・文学賞に関する新たな研究計画も採択されたので、そこへの接続を意識し、『改造』に係わる作家たち、及び戦後改造社の企画した文学懸賞・文学賞につながる調査を行い、それらを論文にまとめていく予定である。
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Causes of Carryover |
本研究計画1年目に、校務との兼ね合いで想定していた海外調査を行うことができなかった。そのために、調査での使用を想定していたPC関連機器の購入も行わなかった。 2年目においても、勤務校の変更があり、授業・校務の内容が変わったため、その対応のために、まとまった時間を確保しにくくなってしまった。その結果、主に出張旅費として想定して費用を使用することができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は、主に出張旅費として研究費を使用し、本研究計画の目的に中心である『改造』懸賞創作関連資料のまとめと論文化につなげていく予定である。
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Research Products
(5 results)