2013 Fiscal Year Research-status Report
言語多様性の記述を通して見る中国雲南省チベット語の方言形成の研究
Project/Area Number |
25770167
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
鈴木 博之 国立民族学博物館, 民族社会研究部, 外来研究員 (10593006)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | チベット語 / 歴史言語学 / 言語地理学 / フィールドワーク / 中華人民共和国 |
Research Abstract |
本研究は1)臨地調査と、2)データ整理・解釈に分かれる。 1)については、短期の臨地調査を3度行い、雲南省香格里拉県および維西県において合計5種のカムチベット語方言(Choswateng, Myigzur, Phuri, Gagatang, sKobsteng)の語彙・文法調査を行った。また、次年度の調査に向けて、村落の選定を行うための基礎情報を収集した。また、村落に伝わる宗教文献も収集し、それにまつわる村民の歴史を口頭で語ってもらい、言語資料として供するだけでなく、移民の年代・状況などを把握する史料的価値のあるものを収集できた。 2)については、まず収集した言語データは電子的にデータベース化し、検索可能な電子的資料を作成した。次に、言語地図を作製するベースとして、フリーソフトMANDARAおよびGoogle Mapsの性能比較を逐次行い、その機能性から、当初予定していた前者ではなく、後者をベースとすることに決定した。また、作成した言語地図を解釈する方法を検討し、語彙形式の多様性に富む語、少数の特定の語彙形式が用いられる語、音韻対応のみが問題になる語、と種別を分けて解釈を加える見通しが立った。 以上の成果に基づいて、論文を4件発表し、口頭発表を3件行った。口頭発表の際には、参加者との交流において、地理言語学の方法論を検討する機会を持つことができ、本研究を推進するために役立った。また、研究最終年度末に予定している単著の執筆について、基本計画を立てた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
方言調査の地点について、当初の予定とは異なる方言の記述を行うことになった。ただし調査対象は、未記述の方言であれば、計画の年次の通りである必要は必ずしもなく、今年度に予定にない方言の記述を行うことがてきたのは収穫であるといえる。次年度の調査対象方言と適宜入れ替えなど調整しながら、計画書にある通りの研究が可能となるように現地調査を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は計画にそって研究を遂行することが可能である。ただし、言語地図の解釈に際して、その土地の歴史的背景がわかる資料が必要とされることから、関連する文献を収集したり、口頭による歴史の物語を収集し、研究に供する方向で調査内容を追加する必要性が出てきた。これは計画書にある調査内容と並行して行うことができる性格のものであり、本来の計画を変更するには当たらず、また支障も出ないと見込んでいる。今後も計画にそって研究を行う予定である。
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