2014 Fiscal Year Research-status Report
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25770226
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
井上 敬介 北海道大学, 文学研究科, 専門研究員 (10553034)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 第二期北海道拓殖計画 / 憲政会 / 政友会 / 民政党 / 北海道支部 |
Outline of Annual Research Achievements |
第二期北海道拓殖計画と戦前二大政党(立憲政友会と憲政会及び立憲民政党)の関係について、三論文を通して以下の三点を検討した。その際に、これまでほんど注目されてこなかった「北海タイムス」・「小樽新聞」・「函館新聞」などの地方紙(マイクロフィルム)や「高岡パンフレット」などの北海道大学所蔵の貴重史料、「橋本東三文書」などの北海道立文書館所蔵の貴重史料を用いた。第一に、憲政会政権期の第二期拓殖計画策定時において連携した二大政党北海道支部だったが、中央の政権競争の影響をうけて対立するようになった。そのことは、同計画を財源面で不十分なものとする結果となった。第二に、田中義一政友会内閣期において、政友会は同計画改訂を企図したが、同党北海道支部は第一回普通選挙及び道会選挙において民政党を打倒するため、超党派問題の同計画を同党の党略に従属させた。このことはさらなる二大政党対立を惹起させ、同計画改訂は失敗した。第三に、民政党政権期において二大政党北海道支部は昭和恐慌の深刻化をうけ、対立から連携に転じた。浜口雄幸首相狙撃事件を機に苛烈化した中央の二大政党間対立と対照的に、二大政党北海道支部は道会において同計画改訂で一致し、失業対策問題でも共闘した。地方における二大政党の連携の機運が中央における協力内閣運動の背景にあった。近年の日本近現代政治史研究では、戦前二大政党制が地方に及ぼした影響の重要性が指摘されている。本研究は戦前二大政党の問題を考察するとともに、二大政党の力量の再評価を北海道という視角から試みる点において意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
戦前二大政党制の絶頂期において、中央における政党間政権競争の影響をうけ、第二期北海道拓殖計画が不完全なものとなり、同計画改訂の試みも失敗したことを指摘した。北海道もまた、党弊から無縁ではなかったことを解明するとともに、戦前二大政党制と地方との関係の一端を明らかにした。北海道選出代議士及び北海道会議員を中心に、二大政党北海道支部を検討し、選挙時における各支部の特色や中央における独自の政治的役割を明らかにした。二大政党に従属する北海道庁や道会、超党派で形成される北海道協会にも着目し、北海道政治の全体像の把握に努めた。なお、当該年度の成果については、近日中の学術雑誌への投稿を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は1930年代(特に政党内閣崩壊後)の北海道に着目し、二大政党北海道支部が昭和恐慌期における農村救済や失業者対策問題、さらには第二期北海道拓殖計画改訂運動で連携していく過程を考察する。この作業は、これまで軽視されてきた政党内閣崩壊後の二大政党の力量について、北海道という視角から再評価することを目的とする。この結果、北海道開発の源流とともに、今日の政党と政策の在り方を考える手がかりが提示されるだろう。また、これまで着目されてこなかった北海道とソ連との関係について、満州事変前後における北海道選出代議士の北千島問題に関する言説から考察する。 現時点では北海道における数々の貴重史料に加えて、国立国会図書館憲政資料室所蔵の未公刊史料が手元にあり、研究準備は万全である。
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Causes of Carryover |
当該年度は、北海道大学付属図書館を中心に札幌市における貴重史料収集及び学術論文三本の作成に専念した。当初の予想以上の発見があったため、予定していた北海道各地への出張及び東京出張を行わなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
北海道各地(旭川市・富良野市・函館市・小樽市・根室市など)の史料収集及び東京(国立国会図書館)への出張を予定している。なお、調査予定の史料はすでに把握している。
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