2013 Fiscal Year Research-status Report
アメリカ民事訴訟における情報不提出または隠匿の際の制裁―不利益推定説示を中心に
Project/Area Number |
25780007
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
竹部 晴美 京都府立大学, 公共政策学部, 講師 (00610007)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ディスカバリー / 不利益推定説示 / 制裁 / 情報隠匿 / 民事訴訟手続き / アメリカ |
Research Abstract |
日本の民事訴訟手続きにおいて文書提出命令が裁判所に認められた場合、相手方が情報提出を拒否し隠匿しても制裁を受けることはない。この点、アメリカでは情報提出の拒否し隠匿した当事者に対する制裁を設けている。 そのため本研究では、平成25年度に、アメリカ民事訴訟におけるディスカバリー制度について、情報の提出を拒否または隠匿した場合の制裁についての不利益推定説示(adverse inference instruction)に関する聞き取り調査と資料収集を行った。その結果、FEDERAL CIVIL JURY INSTRUCTIONS OF THE SEVENTH CIRCUITという説示集の存在が明らかになり、説示集を原案にして裁判官自身で不利益推定説示を作成していることがわかった。現在この説示集の調査検討を行っている。 25年度は、不利益推定説示についての判例調査も行った。これらについては26年度に分析し内容の整理検討を行っていく予定である。 日本では現在、民事司法制度改革でアメリカのディスカバリーに類似した制度の導入や民事審判制度の導入が検討されている。この改革を行う際の制裁制度の必要性についても検討した。 また日本では民事訴訟法第224条で真実擬制に規定している。しかし、実際に行われている日本の民事訴訟(25年度はニチアス訴訟を調査した)では、裁判所から真実擬制をされても、文書提出を拒否し、提出しない当事者がいる。このような場合、アメリカの不利益推定説示のような厳格な制裁が設けられれば、日本の訴訟で起こっているような問題は生じないと考える。したがって26年度の研究調査は、アメリカの不利益推定説示の理解を深めるとともに、日本の民事訴訟法改正への示唆を行いたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、平成25年度には、アメリカ民事訴訟のディスカバリーにおいて情報の提出を拒否または隠匿した場合の制裁についての判例理論、州の制定法、そして学説を整理、分析する予定であり、おおむね研究資料の収集は予定通り行えた。 しかし、当初25年度はハワイ州最高裁判所に調査に行く予定であったが、それに限定しないで、様々な州の裁判官に聞き取り調査を行い、よりアメリカでも中心的で影響のある裁判所の裁判官に調査を行うため、シカゴ(科研費ではなく本務校研究費にて渡航した。)とニューヨークで調査をおこなった。それらの調査で、本研究の申請時には多くの裁判官がそれぞれの不利益推定説示も作成しているように考えていたが、裁判官個人で工夫がなされているとは言えない状況であることがわかった。 また不利益推定説示を受けた訴訟当事者や弁護士へのインタビューを検討していたが、平成25年度の研究では実行できなかった。しかし研究を進める中で、日本法への示唆を行うためには日本の訴訟で真実擬制が出された訴訟の検討の必要性がでてきたため、ニチアス訴訟について現在も調査検討を行っている。 平成25年5月には、日本の民事司法改革で検討されている民事審判制度について口頭報告を行った。 以上、研究予定に変更があったため、おおむね順調であるとした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、まず、申請時の予定通り、民事訴訟で情報の提出を拒否または隠匿した場合に制裁を受けることで法廷代理人(弁護士)側の不利益についての調査を行う。そのため企業法務を専門的に扱うアメリカの法律事務所に訪問し、聞き取り調査と意見交換を行う予定(平成26年9月予定)である。 平成25年度の調査を引き続き検討を深める。具体的には、FEDERAL CIVIL JURY INSTRUCTIONS OF THE SEVENTH CIRCUITという説示集の内容を詳細に調査検討を行ない、United States v. Laurent, 2010 U.S. App. LEXIS 12449 (1st Cir. June 17, 2010), Rimkus Consulting Group v. Cammarata, 688 F. Supp. 2d 598 (S.D. Tex. 2010)についても分析と内容の整理検討を行なう。またStender v. Vincent, 92 Haw. 355 (Haw. 2000)やExotics Hawaii-Kona, Inc. v. E. I. du Pont de Nemours & Co., 104 Haw. 358 (Haw. 2004)、そしてKukui Nuts v. R. Baird & Co., 6 Haw. App. 431 (Haw. Ct. App. 1986)についても検討をしたいと思う。 日本法へ若干の示唆も行ないたいと思う。ニチアス訴訟を中心に真実擬制が認められた訴訟にも触れ、その問題点を明らかにする。そしてアメリカの不利益推定説示のような厳しい制裁規定が日本法にも必要であることを言及したいと思う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度に必要な物品はすべて購入し、調査研究旅行も2回行ったため、25年度に必要な図書や物品、そして調査研究旅行もなかったので、多少予算が残ってしまった。 平成26年度にも調査研究旅行に2度行く予定である。したがって、旅費が当初の予定より増加する可能性がある。物品費については、研究に必要な洋書の購入に充てる予定である。人件費については申請時には必要であると考えていたが、使用しない可能性があるので、その時は旅費に充当する。
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Research Products
(1 results)